阿曽沼慎司

阿曽沼慎司は、1951年（昭和26年）3月5日に生まれた日本の元厚生・厚生労働官僚です。広島県の出身。

若年期とキャリアの出発点

広島学院高等学校を卒業後、京都大学経済学部に進学し、1974年（昭和49年）3月に同大学を卒業しました。大学時代は当初、大学院に進み研究者となる道を考えていましたが、下宿先の仲間6人のうち5人が医学部の学生であった影響を受け、患者の視点に立った医療行政に深く関わりたいという思いを抱くようになりました。この経験が、厚生省（当時）への入省を志すきっかけとなります。

大学在学中の1973年（昭和48年）8月には、難関である国家公務員採用上級甲種試験（経済）に合格。翌1974年（昭和49年）4月、厚生省の一員となり、キャリアの第一歩として大臣官房人事課に配属されました。

厚生省・厚生労働省での多様な経験

厚生省に入省後、阿曽沼氏は年金、医療、健康政策といった社会保障制度の根幹をなす多岐にわたる分野で実務経験を積みました。初期のキャリアでは、年金局年金課、保険局医療課や国民健康保険課などで専門知識を深めました。その後、健康政策局総務課や大臣官房会計課などで課長補佐といったポストを歴任し、組織運営や政策調整のスキルを磨きました。

また、大臣官房総務課広報室長、老人保健福祉部老人福祉課シルバーサービス指導官、大臣官房政策課企画官といった企画・立案に関わる重要なポストも経験し、省全体の幅広い視野を養いました。

キャリアの途上では、本省以外の機関への出向も経験しました。徳島県庁では保健環境部環境保全課長や企画調整部企画調整課長として地方自治体の行政に携わり、地域の課題に対応しました。社会福祉・医療事業団（現：福祉医療機構）では企画指導部上席調査役を務め、社会福祉・医療分野の事業運営に関する知見を深めました。さらに、日本貿易振興会（JETRO）のニューヨークセンターに駐在員として派遣され、国際的な視点から情報収集や交流にも従事しました。

省内主要ポストと行政手腕の発揮

本省に戻ってからも、阿曽沼氏は厚生行政の中核を担うポジションを歴任しました。年金局年金課長、薬務局経済課長、健康政策局経済課長、健康政策局総務課長、大臣官房会計課長といった主要な課の責任者を務め、各分野の政策実行や組織マネジメントに深く関与しました。

2000年代に入ると、その豊富な経験と高い能力が認められ、厚生労働省の中枢を担う局長級ポストを歴任していきます。2002年（平成14年）8月には大臣官房審議官（医薬保険・医政担当）に就任。その後、厚生労働省の顔とも言える重要ポストを次々と務めました。

具体的には、

2003年（平成15年）8月：医薬食品局長
2005年（平成17年）8月：大臣官房長
2006年（平成18年）9月：老健局長
2008年（平成20年）7月：社会・援護局長
* 2009年（平成21年）7月：医政局長

といった主要な局のトップを歴任し、厚生労働行政の広範な分野で指揮を執りました。

厚生労働事務次官への就任、そして退官

長年にわたる省内外での幅広い経験と、各主要ポストでの確かな実績が高く評価され、2010年（平成22年）7月30日、阿曽沼氏は厚生労働省の事務方トップである事務次官に就任しました。複雑化・多様化する社会保障制度や労働環境の課題に対し、事務次官として省全体の組織運営と政策遂行の重責を担いました。約2年間、事務方トップとして厚生労働行政を牽引した後、2012年（平成24年）9月10日に公職を退きました。

退官後の活動

厚生労働省を退官した後も、阿曽沼氏は社会貢献の活動を続けています。2013年（平成25年）4月からは母校である京都大学に戻り、iPS細胞研究所の特定研究員として、最先端の研究活動を支援する立場から関与しました。さらに、2014年（平成26年）10月1日には京都大学の理事に就任。大学運営の要職として、研究・教育活動の発展に現在も貢献しています。

阿曽沼慎司氏は、約40年にわたる厚生省・厚生労働省でのキャリアを通じて、医療、年金、福祉、労働といった国民生活に関わる幅広い分野で行政手腕を発揮し、最終的には事務次官として省を率いました。公職を退いた後も、教育・研究機関においてその経験と知見を活かし、社会に貢献し続けている人物です。

もう一度検索