阿毘達磨大毘婆沙論

阿毘達磨大毘婆沙論について

『阿毘達磨大毘婆沙論』（あびだつま だいびばしゃろん、梵: Mahāvibhāṣa）は、仏教における重要な注釈書の一つです。この作品は、主に仏教の説一切有部の教義を解説しており、特に『発智論』に対して詳細な注釈を行っています。また、略称として『大毘婆沙論』や『婆沙論』が使われることも多く、これらは特に玄奘訳の『阿毘逹磨大毘婆沙論』を指す場合が一般的です。

概要

本論は非常に広範な内容を含んでおり、仏教の教理や理念を深く掘り下げて解説しています。伝説によれば、カニシカ王が主宰したカシミールでの結集において論蔵が作られたとされていますが、その真偽は不明です。現在は、玄奘訳の『阿毘逹磨大毘婆沙論』に対応するサンスクリットの断片が発見されていますが、完全な梵本や蔵本はまだ見つかっていません。

一方、漢訳の文献は充実しており、玄奘による200巻の新訳をはじめ、浮陀跋摩による60巻の旧訳、僧伽跋澄が手がけた14巻の『鞞婆沙』の翻訳などが存在します。これらの訳は以前は同本異訳と考えられていましたが、最近の研究では異本別訳と捉える見方が強まっています。

派生・影響

『阿毘達磨大毘婆沙論』はいくつかの他の経典にも影響を与えています。特に『阿毘曇心論』、『阿毘曇心論経』、『雑阿毘曇心論』、および『倶舎論』がこの書からの教義を取り入れた綱要書として位置づけられています。この考え方は木村泰賢によるもので、学界でも広く受け入れられています。

参考文献

『阿毘達磨大毘婆沙論』に関する研究は多岐にわたりますが、以下の文献は特に有益です：

• - 木村泰賢「大毘婆沙論結集の因縁に就て」
• - 河村孝照「法救造五事毘婆沙論についての検討」
• - 桝田善夫「阿毘達磨大毘婆沙論の一特相」
• - 田中教照「使品より見た『阿毘曇心論』の位置」

これらの文献を通じて、本論の理解がさらに深まることでしょう。『阿毘達磨大毘婆沙論』は、仏教の教義研究における基礎的な文献として今日も重要視されています。

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