阿部正功

阿部正功：激動の時代を生き抜き、学問に生涯を捧げた最後の棚倉藩主

阿部正功は、江戸時代後期に生まれた大名であり、明治時代には華族として名を馳せました。陸奥国棚倉藩の第2代にして最後の藩主という重要な役割を担い、激動の時代を生き抜いた人物です。彼の生涯は、時代変遷の中で揺れ動く立場、そして学問への飽くなき探究心という二つの側面によって彩られています。

正功は、棚倉藩主阿部正耆と側室の弦尾との間に生まれました。幼少期は光之助、基之助という名前で呼ばれていました。しかし、父・正耆の高齢出産であったため、当初は家督相続の予定はなく、分家の阿部正外、そしてその子・正静が藩主を継承しました。

しかし、慶応4年（1868年）の戊辰戦争において、正静が旧幕府側に与したことで強制隠居となり、正功は4万石減封のうえで6万石の領地を引き継ぎ、わずか7歳にして棚倉藩最後の当主となりました。この出来事は、正功の運命を大きく変え、幼いながら藩主としての重責を負うことになったのです。

明治2年（1869年）の版籍奉還により、正功は藩知事となり、棚倉藩校・修道館で学びを深めました。しかし、明治4年（1871年）の廃藩置県によって免官。その後は、学問への道を歩むことを選びます。

1873年からは慶應義塾で学びを続け、幅広い知識を習得しました。さらに、箕作秋坪の英語塾「三叉学舎」にも通い、英語の修業にも励みました。学問への探究心は、正功の生涯における重要な柱の一つであったと言えるでしょう。

学問のみならず、考古学研究にも深い関心を寄せました。1882年には地学協会、1890年には坪井正五郎の人類学会に入会し、芝丸山古墳の発掘調査などに参加。自ら収集した考古学的な遺物を自邸に陳列館を作り公開するなど、熱心な活動を行いました。その知識と情熱は、当時の考古学界に貢献したことは間違いありません。

さらに、梨本宮守正王の学友に就任し、宮家にも出仕するなど、社会的な地位も確立していきました。1884年には子爵を叙爵され、麻布一帯の大地主、そして第十五銀行の大株主となるなど、経済的にも成功を収めました。

正功は、1925年（大正14年）に66歳で生涯を終えました。その後、彼の収集品は孫の阿部正友によって京都帝国大学（現京都大学）、学習院、東京文理科大学（現筑波大学）に寄贈され、現在も研究に役立てられています。

正功の生涯は、時代の変化に翻弄されながらも、持ち前の知性と探究心で道を切り開いた、波乱に満ちたものでした。藩主としての責任、学問への情熱、そして考古学研究への貢献。これらの活動は、現代に生きる私たちにとっても、貴重な歴史的遺産として受け継がれているのです。彼の功績は、単なる大名や華族の枠を超え、時代を超えて人々に知られるべきものです。

家族
父：阿部正耆
母：弦尾（側室）
養父：阿部正静
妻：徳大寺照子（徳大寺公純の娘）
子女：阿部要子、阿部直子
養子：阿部正寛（島津忠亮の三男）

参考文献
藩主人名事典編纂委員会『三百藩藩主人名事典』
学習院大学史料館『陸奥国棚倉藩主・華族阿部家資料』
* 白河市編『白河市史 第二巻 通史編2 近世』

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