阿部致康

阿部致康（あべ おきやす）は、安土桃山時代から江戸時代前期にかけての武士です。彼は陸奥国湯長谷藩（現在の福島県いわき市）の家臣であり、阿部五次右衛門家の祖として知られています。官位は従五位下・右衛門尉、右京亮に叙せられました。

出自と出家

阿部致康は、准大臣・勧修寺晴豊の五男として生まれました。初めは勧修寺致房（または、勧修寺致康）と名乗っていました。当初は神祇管領長上・吉田兼治の猶子となり、その後出家して愛宕山大善院の別当を務めていました。

還俗と徳川家への仕官

慶長8年（1603年）、兄である勧修寺光豊（当時の武家伝奏）の命により還俗し、徳川家康に仕えることになりました。この際、徳川家康から偏諱「康」の字を賜り、阿部致康と改名し、武士としての身分を得ました。

阿部家との関係

寛永3年（1626年）には、大坂城代を務めていた阿部正次の猶子となり、阿部右京と称しました。この縁組を通じて、阿部家との関係を深めました。

子孫の繁栄

致康の養子（孫にあたる）・阿部房豊（五次右衛門）は、大坂定番・遠山政亮（初代・湯長谷藩主）に仕えました。以降、彼の子孫は代々給人格（扶持米取）として湯長谷藩に仕え、家系を繋いでいきました。

阿部致康は、公家出身でありながら武士として身を立て、その子孫が湯長谷藩に仕えるという、特異な経歴を持つ人物でした。彼の足跡は、当時の社会における身分制度や武家と公家の関係性を考察する上で、重要な意味を持っています。

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