阿部重次

阿部重次：徳川家光に仕えた岩槻藩主

阿部重次は、江戸時代前期に活躍した大名です。武蔵国岩槻藩の第2代藩主として知られ、三浦重次という別名も持っていました。徳川家光の信頼が厚く、老中という要職にも就いています。阿部家宗家の2代目当主であり、山城守や対馬守といった官位にも叙せられました。

波乱に満ちた前半生

阿部重次は、大坂城代を務めた阿部正次の次男として誕生しました。当初は、男子に恵まれなかった三浦重成の婿養子となりました。しかし、後に三浦重成に男子が生まれたため、重次は近江国浅井郡に3000石の領地を与えられ、別家を築きました。大坂夏の陣では、病気の三浦重成に代わり、三浦家を率いて出陣するなど、若くして武勇を振るいました。その後、三浦家は嫡男の死去により断絶し、重次の弟の系統が阿部家の家臣となったと伝えられています。

その後、実兄である世子の急死によって阿部家に戻り、家督を相続します。同時期に老中を務めていた阿部忠秋は重次の従弟にあたります。重次の兄の遺児は、重次から分知を受けて別家を築いた後、阿部忠秋の養子となり、家督を継いでいます。

老中就任と家光の側近として

元和2年（1616年）、重次は松平忠輝（家光の叔父）の子である徳松を預かりました。しかし、徳松は重次から冷遇され、寛永9年（1632年）に焼身自殺という悲劇的な最期を迎えています。

重次の父である正次は、寛永3年（1626年）から正保4年（1647年）まで大坂城代を務めていました。その間、重次自身も寛永15年（1638年）に老中に任命されています。

将軍家光は頻繁に日光東照宮を参拝していましたが、江戸から日光へ向かう際の宿泊地が岩槻であったことから、岩槻藩主であった重次は家光をたびたびもてなしました。

家光への殉死

慶安4年（1651年）、家光が死去すると、重次は家光に殉じて自害しました。享年54歳でした。同じ日に、老中であった堀田正盛も殉死しています。重次の辞世の句は「天てらす月のひかりともろもろに 行すへすゞし曙のそら」と伝えられています。家督は長男の定高が継ぎました。

阿部重次の足跡

阿部重次の生涯は、数々の重要な出来事によって彩られています。婿養子から始まり、家督相続、老中就任、そして将軍家光への殉死と、激動の時代を生き抜いた人物として、その生涯は多くの歴史資料に記録されています。彼の功績は、岩槻藩の発展、そして幕政への貢献という形で、今もなお語り継がれています。彼の死後、家督を継いだ長男の定高、そして次男の正春もまた、それぞれの立場で歴史の舞台に立ち続けています。

年表

寛永10年（1633年）3月23日：六人衆となる
寛永15年（1638年）4月22日：5万9千石をもって岩槻藩主となる
寛永15年（1638年）11月7日：老中に任ぜられる
正保4年（1647年）11月14日：父・正次死去
慶安元年（1648年）7月18日：父の遺領をあわせて9万9千石を領する
慶安4年（1651年）4月20日：将軍家光の死去に伴い殉死

系譜

父：阿部正次
母：佐原義成の娘
正室：三浦重成の娘
継室：正寿院（松平定勝の娘）
長男：阿部定高（1635年 - 1659年）
次男：阿部（三浦）正春（1637年 - 1716年）
女子：松平定行養女、松平忠倶正室
女子：松平近陳正室

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