松平定勝

松平定勝：徳川家康の異父弟、その生涯と功績

松平定勝（まつだいら さだかつ）は、戦国時代から江戸時代前期にかけての武将・大名であり、徳川家康の異父弟として知られています。定勝系久松松平家宗家初代として、その名を歴史に刻みました。

生い立ちと初期の活躍

永禄3年（1560年）正月、定勝は久松俊勝の四男として尾張国坂部城で誕生しました。生後間もなく、異父兄である松平元康（後の徳川家康）から松平氏の称号と葵紋を授けられます。家康に従い、長篠の戦いや天目山の戦いにも従軍し、武将としての経験を積みました。

天正12年（1584年）の小牧・長久手の戦いでは、蟹江城合戦で二番乗りを挙げるという武功を立てました。しかし、戦後、羽柴秀吉から羽柴家の養子にするように要求されますが、生母である於大の方の願いにより、松平家に留まることになります。

家康との関係

於大の方は、長兄・康元が常に本国を留守にし、次兄・勝俊が人質として両足の指を失っていたため、末子の定勝を手元に置いておきたいと考えました。結局、家康の次男である於義丸（後の結城秀康）が秀吉の養子となりました。この一件で、定勝は一時的に家康から疎まれたとも言われています。

定勝の室は、家康の口利きで決まりました。長篠の戦いの後、家康は娘婿となった奥平信昌が徳川家に臣従した際、武田家の人質になっていた奥平一族の娘を、定勝の室に迎え入れることにしました。それが二之丸殿であり、彼女の入輿に際し、弟や外伯父が奥平家から徳川家に仕えることとなりました。

大名としての地位確立

天正18年（1590年）9月、定勝は下総国小南で3000石を賜ります。慶長5年（1600年）には4000石を加増され、伊勢国長島城主となり、後に2万石を加増されて計2万7000石の領主となりました。慶長6年（1601年）には3000石を加増され、山内一豊に代わり遠江国掛川藩主となり、従五位下・隠岐守に叙任されました。

慶長7年（1602年）には、家康の十男（後の徳川頼宣）が誕生した際、家康から定勝の幼名である長福丸の名を譲るように命じられます。これにより、長福丸の名は紀州徳川家の嫡男の名となりました。同年8月には、母・於大の方が伏見城で亡くなり、その霊柩の護衛を務めました。

慶長10年（1605年）5月、娘の阿姫が家康の養女となり、山内忠義と婚約します。家康より化粧料として豊後国山田郷1000石を阿姫に賜りました。

伏見城代から桑名藩主へ

慶長12年（1607年）、定勝は伏見城代に就任し、元和元年（1615年）には従四位下に昇ります。元和3年（1617年）には6万石を加増され、伊勢桑名藩11万石の城主となりました。一説には、家康が駿府城で亡くなる際、定勝を2代将軍・秀忠の相談役とするように遺言したとも言われています。

家康の死後、甥である秀忠から篤く敬われ、元和9年（1623年）7月には秀忠から侍従職を勧められますが固辞しました。その2カ月後、左近衛権少将に任ぜられ、桑名少将殿と称されました。

死去とその後

寛永元年（1624年）3月14日、定勝は居城である伊勢桑名城で亡くなりました。享年65。遺骸は桑名照源寺に葬られ、霊牌は江戸伝通院、松山大林寺、今治松源院にも祀られました。文政6年（1823年）には、11代・定通により息長福玉命の神号を贈られ、松山城に東雲神社が勧請されました。神号は後に東雲大明神と改められました。

松平定勝の末裔には、フリーアナウンサーの松平定知がいます。

系譜

正室：たつ - 二之丸殿、内室松源院殿、奥平信昌養女、奥平貞友の次女
長女：松尾君 - 家康の養女、服部正就正室
長男：松平定吉
次男：松平定行
三男：松平定綱
次女：阿姫 - 徳川家康養女、山内忠義正室
四男：松平定実
三女：紀為君 - 家康養女、中川久盛正室
四女：菊君 - 光寿院、酒井忠行正室
五男：松平定房
側室：村治氏
六女：玉君 - 池田恒元正室
六男：松平定政
五女：鶴君 - 阿部重次継室

関連項目

* 徳川十六神将

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