阿麻和利

阿麻和利（あまわり）

15世紀の琉球王国、特に勝連半島一帯に強大な勢力を誇った有力な按司（あじ）。その生涯は謎に包まれた部分が多く、後世の歴史書と民間の伝承では異なる評価がなされています。出身地は北谷間切屋良村（現在の嘉手納町字屋良）とされ、幼名は加那（カナー）であったと伝わります。

生涯

伝えられる系譜によると、中北山の末裔とされる伊覇按司一世の子孫にあたる人物とされます。具体的には、伊覇按司一世の五男である安慶名大川按司一世の孫にあたり、その次男である屋良大川按司と、南山の有力者であった兼城若按司の娘との間に生まれたとされています。同じく有力者であった越来賢雄（鬼大城）も、安慶名大川按司一世の孫とされることから、阿麻和利と越来賢雄は遠縁にあたる関係であった可能性が指摘されています。

勝連城の支配者となった経緯については、圧政を敷いていたとされる前城主、茂知附按司（もちづきあじ）を打ち破り、勝連城の第10代城主の座に就いたと史書に記されています。城主となった阿麻和利は、勝連を一大貿易拠点として発展させました。東アジア諸地域との盛んな交易を行い、莫大な富を築くとともに、大陸から新たな技術や文化を積極的に取り入れ、勝連の繁栄をもたらしたとされています。

その勢力拡大を警戒した琉球王国の第一尚氏王統第6代国王、尚泰久は、懐柔策として自身の娘である百度踏揚（ももとふみあがり）を阿麻和利に嫁がせました。これにより、阿麻和利は国王の娘婿という立場を得、王府との関係を一時的に強化しました。

しかし、勝連の繁栄とともに阿麻和利の権勢はさらに高まり、当時の琉球において「麒麟児」とも称されるほどの評判が広がりました。この状況を危惧した首里の王府は、次に滅ぼすべき標的として阿麻和利を捉えるようになります。

史書における最も有名な出来事として、阿麻和利が中城城主であった護佐丸を攻め滅ぼした件が挙げられます。これは、王府の命により、首里城への侵攻を計画していたとされる護佐丸を討伐し、自身の忠誠を示すために行われたと記録されています。護佐丸は忠臣とされ、この討伐は後世、阿麻和利の悪行として語られることになります。

その後、阿麻和利自身も首里城攻略の野望を抱いたとされ、王府の疑念を招きました。最終的には、王府の命を受けた越来賢雄（鬼大城）率いる討伐軍によって攻め滅ぼされたとされています。しかし、発掘調査が行われた勝連城跡からは、大規模な戦闘の痕跡がほとんど見られないという指摘もあり、史書に記された最期の状況には異説も存在します。

歴史的評価

正史である『球陽』などにおいては、護佐丸が忠臣として、阿麻和利は野心に満ちた悪人と位置づけられています。しかし、琉球の古い歌謡集である『おもろさうし』には、阿麻和利を讃える歌が複数収録されており、当時の人々からは英雄視されていた可能性を示唆しています。現代においても、歴史研究者の新城俊昭氏などが、通説に疑問を投げかけ、阿麻和利の業績や人物像を再評価する見解を示しています。

その波乱に満ちた生涯は、後世の文学作品や演劇、テレビドラマなどの題材としても描かれており、琉球の歴史における重要な人物の一人として、現在も多くの関心を集めています。


関連項目:

• - 護佐丸・阿麻和利の乱
• - 肝高の阿麻和利 (舞台)
• - 椿説弓張月 (小説)
• - 阿麻和利 THE LAST HERO (テレビドラマ)

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