陌

境の通貨「陌（はく）」の歴史

陌（はく）は、中国の晋から南北朝時代にかけて使用されていた通貨単位の一つで、基本的には100枚の銭貨を一つのまとまりとして数える基準でした。この通貨単位は、古代中国における交易や経済活動において重要な役割を果たしました。

境の銭貨のまとまり

古代の中国では、銭貨の持ち運びが便利なように、銭さし（または銭繦、銭貫）に複数の銭を通して一つの单位として使用することが一般的でした。この方法は、銭貨を効率良く管理するための工夫と考えられています。具体的には、銭による取引が日常的に行われており、100枚または1000枚単位でまとめられたものが流通していました。

初期の使用例

前漢の時代には、賈誼による上奏文に見られるように、銭を100枚単位でまとめる事例がありました。このような慣習は、歴史的文献の中に多数の記録が残されており、文化や経済の発展を支える基盤となっていたことが伺えます。特に、『太平御覧』に収められた東晋の劉超の表文には、「臣に正陌三万銭・五疋の布有り」という表現があり、この時点で既に「陌」という単位が用いられていたことが分かります。

短陌と正陌の違い

同時期の葛洪が記した『抱朴子』には、「人の長銭を取り、人に短陌を還す」という記録があり、ここからは正陌と短陌と呼ばれる二つの慣行が存在したことがわかります。正陌は通常の100銭を基準とし、短陌はその一部を指していました。このように、取引の現場では数量の多様性が求められていたことが分かります。

南朝と北朝の違い

また、南朝の時代には、銭100枚の重さを1斤2両（432銖）と定められていた記録もあります。他方、北朝の地域では「陌」という単位が広く用いられず、代わりに銭さしに通された銭1000枚を指して「貫」という呼称が使われることが一般的でした。

統一された通貨体系

その後、北朝系の隋が中国を統一することで、南朝での「銭100枚＝1陌」という慣習は廃止され、すべての地域で1貫＝1000枚という統一された基準が採用されることとなりました。しかし、短陌の習慣は生き残り、銭貨100枚を指す言葉として「陌」という名称は引き続き使用されました。このように、「陌」は歴史においてただの通貨単位に留まらず、商取引や経済活動の形を豊かにする重要な要素となりました。

参考文献

このような歴史を知る上で有用な資料として、宮澤知之の『中国銅銭の世界――銭貨から経済史へ』があります。この著作では、貨幣単位の成立について詳細に記述されており、読者に古代中国の経済の深い理解を促してくれます。

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