陳家太極拳

陳家太極拳

陳家太極拳は、中国河南省温県陳家溝で生まれた中国武術であり、陳氏一族によって代々伝えられてきました。太極拳という名前がついていますが、そのルーツは通臂拳から派生した炮捶という拳術にあります。陳家溝に伝わった張三丰の太極拳を学んだ蒋発から、陳長興が学んだものが陳家太極拳の起源とされています。

特徴

陳家太極拳の動作は、剛柔相済、快慢兼備を理想としています。楊家太極拳のような柔軟で緩やかな動きだけでなく、跳躍や震脚といった激しく剛猛な動作も含まれているのが特徴です。また、発勁においては、楊家太極拳が得意とする暗勁だけでなく、炮捶独特の明勁も得意としています。陳氏一族独自の工夫による纏絲勁（らせん状の捻りを伴った勁）によって、全身の勁力を統一的に運用します。

炮捶の流れを汲むため、太極拳でありながら豪快な印象を持たれやすいですが、慢練（型をゆっくりと練習すること）を重ねた高齢の達人の拳風は、剛柔が調和し、楊式太極拳のように柔らかく緩やかに見えることもあります。

歴史

陳家太極拳の起源については、現在も議論が続いています。有力な説として、元朝に加担した陳氏一族が、明の洪武帝による殺戮を避けて、無人地帯となっていた河南省温県常陽村（現在の陳家溝村）に強制移住させられた際、家伝として伝えられていた武術が起源であるというものがあります。制定者については、陳氏九世の陳王廷が、家伝の武術や戚継光の『紀効新書』などを参考に創始したとする説が有力です。

陳王廷は、洪砲捶百八拳、五套捶、陳式長拳、十五洪、十五砲の五種類の套路を制定したとされています。その後、陳氏十四世の陳長興が煩雑な套路を整理し、一路（洪砲捶百八拳、五套捶）、二路（陳式長拳、十五洪、十五砲。これを砲捶とも呼ぶ）を制定しました。これが老架式と呼ばれるものです。

さらに、陳氏十四世の陳有本、有恒兄弟がこれを小架式に改変し、陳長興が制定したものを老架式、陳有本、有恒が制定したものを新架式と呼んで区別していました。その後、陳氏十七世の陳発科が新たに新架式（大架式）を制定するに及び、陳有本が制定した新架式を小架式と称するようになりました。

普及

陳式太極拳が広く外部に伝わったのは、中華民国初年、第十八世の陳照丕が北京に出てからです。陳照丕が当時の首都、南京中央国術館に呼ばれ、代わりに北平に赴いたのが陳発科でした。そのため、陳家溝以外では新架式が専ら行われていますが、南京付近では老架式も普及しています。

この他の陳氏のスタイルとしては、陳有本の甥で、陳家溝の隣村の趙堡鎮に婿入りした陳清萍の拳架である趙堡架式と、陳清萍の弟子の李景炎によって考案された忽雷架式があります。

陳式の学習者の間では、大架式に対し小架式、趙堡架式、忽雷架式は、形的には非常に似ていて同一視され易い傾向にありますが、動作的にはどれも特徴ある表演スタイルをとる拳架です。

理論書

陳式太極拳の理論書としては、陳鑫の『陳氏太極拳図説』（陳氏小架式の拳譜）などがあります。また、明代に戚継光が編纂した『紀効新書』の本文十八巻の一つである拳経には、陳式太極拳と共通する技法が見られます。

伝承者

17代目：陳発科（1887年 - 1957年）
18代目：陳照旭（1909年-1960年）

陳家太極拳は、現在も多くの人々によって練習され、その技術と精神が受け継がれています。

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