戚継光

戚継光（せき けいこう）

戚継光（1528年 - 1588年）は、明代中国の武将であり、字を元敬、諡を武毅と称します。彼は、倭寇とモンゴルの両勢力との戦いで傑出した功績を挙げ、その名を歴史に刻みました。また、剣術の一派である竜行剣の開祖とも伝えられています。

生涯

山東省蓬莱県登州衛出身の戚継光は、中国沿岸で活動する後期倭寇の討伐に従事しました。彼は浙江省金華・義烏で兵を集め、「戚家軍」と称される精鋭部隊を組織し、水軍も編成しました。胡宗憲の指揮下、兪大猷や劉顕らと共に倭寇討伐に尽力しましたが、当時の後期倭寇は、日本人幹部が多数の中国人構成員を束ねる多国籍犯罪組織的な側面を持っていました。

1567年に海禁令が解かれると、戚継光は北方防衛に転じ、アルタン・ハンの侵入に対処しました。彼は、万里の長城の大規模な補強・増築工事にも携わっています。これらの功績が認められ、当時大きな権力を握っていた内閣大学士の張居正に重用されました。しかし、張居正の死後、戚継光の功績を妬む者たちの弾劾を受け、免職されることになります。その後、3年後に処置は撤回されましたが、失意の中、世を去りました。

人物像

戚継光は、勇猛な武将である一方で、大変な恐妻家であったという逸話が残っています。軍律を破った息子を処刑したことに激怒した妻から、生涯妾を持たないことを誓わされたにも関わらず、後に2人の妾と密通し、それぞれに隠し子をもうけました。このことが露見すると、妻から妾と子供を殺すよう迫られましたが、戚継光は部下である妻の弟を呼び出し、妻を説得させました。この一件は世間の笑い話となりましたが、彼の深謀遠慮を示すものとしても語り継がれています。妻の死後、彼は妾たちを家に迎え入れ、子供たちと共に生活したとされています。

軍事戦略と兵法

戚継光は、倭寇が用いる日本刀に対抗するため、狼筅（ろうせん）という枝葉の付いた竹製の槍を開発しました。また、この武器を装備した兵を含む10人編成の分隊による集団戦法「鴛鴦陣」を編み出し、倭寇との戦いで多大な戦果を挙げました。

彼は兵法書『紀效新書』や『錬兵実紀』も著しており、これらの兵法は清末に太平天国の乱鎮圧で活躍した曽国藩によって自軍の整備に利用され、また、後に日本が中国に侵略するようになると、倭寇を討伐した戚継光の業績が称えられるようになりました。日本においても、江戸時代の儒学者である荻生徂徠が『紀效新書』を高く評価しました。

『紀效新書』には、宋太祖三十二勢長拳という武術を図版で解説した「拳経」が含まれています。また、倭寇との戦いで得た日本の陰流剣術の目録を研究し『辛酉刀法』を著しています。

関連作品

戚継光を題材とした映画やドラマも制作されています。

映画
『戦神 ゴッド・オブ・ウォー』（2017年、中国・香港）
ドラマ
『大明王朝 〜嘉靖帝と海瑞〜』（2006年、中国）
「万暦首輔張居正」（2010年、中国）※日本未公開

関連項目

倭刀
苗刀
陰流
* 継光 (フリゲート) - 中華民国海軍の成功級フリゲート

もう一度検索