陸軍少年戦車兵学校

陸軍少年戦車兵学校とは

陸軍少年戦車兵学校は、大日本帝国陸軍が機甲部隊の拡充強化のために設立した、少年兵を育成する教育機関です。14歳から19歳までの少年たちが、2年間の教育を受け、戦車兵としての技能を習得することを目指しました。静岡県富士宮市に位置し、広大な敷地と演習場を有していました。

設立の背景と変遷

1939年、千葉陸軍戦車学校内に「少年戦車兵生徒隊」として発足したのが始まりです。その後、1941年に「陸軍少年戦車兵学校」として独立しました。学校は、富士山麓の広大な敷地に移転し、本格的な教育が開始されました。教育期間は当初2年でしたが、戦局の悪化に伴い、繰り上げ卒業が頻繁に行われるようになり、訓練内容も厳しさを増しました。1945年の終戦により、学校は閉鎖されました。

教育内容と学校生活

学校では、戦車操縦や整備などの専門知識、軍事教練、精神教育が行われました。生徒たちは「若獅子」と呼ばれ、厳しい訓練に励みました。朝夕や演習の帰りには、『少年戦車兵学校校歌』や『少年戦車兵の歌』が歌われ、士気を高めました。学校には、約30万坪の敷地に、校舎、集会所、軍需工場、車庫、弾薬庫などが設置されていました。また、朝霧高原一帯が演習場として使用され、隣接して上井出陸軍病院も開設されました。最盛期には、戦車約80両、自動車数十両が配備されていました。

戦争と少年戦車兵

太平洋戦争末期、少年戦車兵たちは、戦局の悪化により、本来の教育期間を短縮して戦場に送られることとなりました。特に5期生の一部は、フィリピン戦や沖縄戦などの激戦地に投入され、多くの犠牲者を出しました。ルソン島では、少年戦車兵による特攻も行われ、彼らの悲劇を物語っています。出征した少年戦車兵と教職員のうち、600名以上が戦死しました。

戦後

終戦後、学校の敷地は米軍に引き渡され、廃校となりました。しかし、跡地には、戦没者を祀る「若獅子神社」が建立され、慰霊碑や帰還戦車が置かれています。また、学校の施設は、開拓農民の入植や学校の校舎として再利用され、現在の朝霧高原における酪農の基盤となりました。

学籍

1期: 150名（昭和14年12月入学、昭和16年7月卒業）
2期: 230名（昭和15年12月入学、昭和17年11月卒業）
3期: 500名（昭和16年12月入学、昭和18年11月卒業）
4期: 600名（昭和17年12月入学、昭和19年5月卒業）
5期: 900名（昭和18年12月入学、昭和19年11月、昭和20年1月卒業）
6期: 700名（昭和19年6月入学、昭和20年7月卒業、残り復員）
7期: 550名（昭和20年3月入学、昭和20年8月復員）
特別幹部候補生: 525名（昭和20年2月入学、昭和20年8月復員）

著名な出身者

桂小金治（落語家）
菊池瑞穂（富士シティオグループ創業者）
小田英孝（NHK戦争証言アーカイブスにて証言）

記録映画と軍歌

少年戦車兵学校の様子は、ニュース映画や記録映画で紹介されました。特に、日本映画社が製作した『富士に誓ふ 少年戦車兵訓練の記録』は、当時の少年たちの間で大きな影響を与えました。また、『少年戦車兵学校校歌』や『富士に誓ふ』、『少年戦車兵の歌』は、当時の軍歌として広く歌われました。

関連施設と史跡

若獅子神社
国立病院機構静岡富士病院（旧上井出陸軍病院）
千葉陸軍戦車学校

関連項目

フィリピンの戦い (1944-1945年)
若獅子神社
国立病院機構静岡富士病院
千葉陸軍戦車学校

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