千葉陸軍戦車学校

千葉陸軍戦車学校は、現在の千葉県千葉市稲毛区穴川に位置していた、大日本帝国陸軍の教育機関です。通称は「戦車学校」として知られていました。この学校は、陸軍の機甲戦力育成において重要な役割を担い、戦車をはじめとする各種車両に関する教育が行われました。

概要

この学校は、当初は陸軍戦車学校として設立され、その後、千葉陸軍戦車学校と改称されました。最終的には陸軍省外局である陸軍機甲本部の所管となり、その教育内容も変遷していきました。陸軍機甲本部隷下となってからは、中戦車や重戦車といったより専門的な分野の教育を分担するようになりました。

前身

千葉陸軍戦車学校の前身は、1925年（大正14年）5月1日に陸軍歩兵学校（千葉）に創設された戦車隊に遡ります。その後、1933年（昭和8年）8月1日には、戦車第2連隊（習志野）が創設され、この連隊の練習部が教育・研究を担当するようになりました。1936年（昭和11年）8月1日、陸軍戦車学校として正式に改編され、陸軍騎兵学校（習志野）内で事務を開始しました。この際、戦車第2連隊の練習部と下士官候補者隊が分離独立し、教導隊や練習隊が加わって学校の基幹が形成されました。

沿革

- 1936年（昭和11年）8月1日：千葉県千葉郡津田沼町習志野偕行社内に陸軍戦車学校が仮設置され、事務が開始されました。
- 1936年（昭和11年）12月1日：千葉県千葉市黒砂町に移転し、同地で事務を開始しました。
- 1939年（昭和14年）8月1日：少年戦車兵生徒隊が設置され、同年12月1日には第一期生150名の教育が開始されました。
- 1940年（昭和15年）9月15日：兵科が廃止され、12月1日には第二期生230名が入学しました。
- 1941年（昭和16年）5月24日：陸軍機甲本部長の隷下となり、教育内容が分担されました（軽機甲は陸軍騎兵学校、中・重戦車は千葉陸軍戦車学校、総合機甲は公主嶺陸軍戦車学校）。7月31日には第一期生150名が繰り上げ卒業し、12月1日には「陸軍少年戦車兵学校」が分離独立し、第三期生500名が入学しました。
- 1942年（昭和17年）7月：満州に四平陸軍戦車学校が新設されたことを受け、千葉陸軍戦車学校と改称されました。7月16日には静岡県上井出に陸軍少年戦車兵学校の新校舎が完成し、8月1日には職員・生徒の転営が完了しました。
- 1944年（昭和19年）7月：下士官候補者隊が幹部候補生隊に改編され、7月6日には動員下令により学生教育が中止されました。学校の組織は戦車第4師団などの編成要員となりました。
- 1945年（昭和20年）3月：四平陸軍戦車学校から教官が転属し、本土決戦要員の教育が再開されました。しかし、同年8月に終戦を迎え、学校は解散しました。

組織・教育区分

学校の組織は、本部、教育部、教導連隊、練習隊、材料廠で構成されていました。

- 本部：学校の運営全般を統括しました。
- 教育部：戦車部隊の学術、通信、整備に関する教育研究を担当しました。甲種学生（中隊長）、乙種学生（通信）、丙種学生（整備）、丁種学生（初級将校）といった教育区分がありました。
- 教導連隊：戦車に関する教育支援を行いました。
- 練習隊：軽装甲車に関する教育支援を行いました。
- 材料廠：学校で使用する資材の管理を行いました。

人事

歴代校長

- 安岡正臣少将（陸士18期）：1936年8月1日 - 1938年2月15日
- 田辺盛武少将（陸士22期）：1938年2月15日 - 1939年10月2日
- 岡田資少将（陸士24期）：1939年10月14日 - 1940年9月24日
- 井上芳佐少将（陸士25期）：1940年9月24日 - 1941年12月5日
- 岩仲義治少将（陸士26期）：1941年12月5日 - 1943年6月10日
- 当山弘道少将（陸士28期）：1943年6月10日 - 1944年7月8日
- （＊欠員）：1944年7月8日 - 1944年12月22日
- 来嶌則和大佐（陸士27期）：1944年12月22日 - 閉校

歴代幹事

- 木村民蔵大佐（陸士21期）：1936年8月1日 - 1937年8月2日
- 井上芳佐大佐（陸士25期）：1937年8月2日 - 1938年7月15日
- 岩仲義治大佐（陸士26期）：1938年12月10日 - 1940年12月2日
- 細見惟雄大佐（陸士25期）：1940年12月2日 - 1941年10月15日

教官

- 玉田美郎中佐（陸士25期）：1936年 -
- 井上芳佐大佐（陸士25期）：1936年8月1日 - 1937年8月2日
- 当山弘道中佐（陸士28期）：1936年12月1日 - 1937年8月2日
- 加登川幸太郎大尉（陸士42期）：1938年6月 - 1939年
- 藤田実彦少佐（陸士33期）：1938年 - 1940年12月
- 小林捨三中佐（陸士31期）：1944年2月10日 - 1944年7月8日

研究部

- 主事：岩仲義治中佐（陸士26期）：1936年12月1日 - 1937年10月15日
- 主事：加登川幸太郎大尉（陸士42期）：1938年6月 - 1939年
- 主事：李鍵公少佐（陸士42期）：1943年2月3日 - 1944年5月12日
- 部員：原乙未生砲兵中佐（陸士27期）：1936年12月1日 - 1939年3月9日

教導隊長

- 細見惟雄中佐（陸士25期）：1936年8月1日 - 1939年4月1日
- 井田君平中佐（陸士30期）：1942年6月17日 - 1943年8月2日

学校附

- 矢崎勘十中佐（陸士26期）：1936年8月1日 - 1936年12月1日
- 重見伊三雄少佐（陸士27期）： - 1939年8月1日
- 寺田雅雄大佐（陸士29期）：1939年10月26日 - 1940年8月1日
- 玉田美郎少将（陸士25期）：1941年10月15日 - 1941年12月1日
- 閑院宮春仁王大佐（陸士36期）：1942年3月2日 - 1942年10月1日

跡地

千葉陸軍戦車学校の跡地には、内務省地理調査所（現在の国土地理院の前身機関）、稲毛区役所、穴川中央公園、千葉県立京葉工業高等学校などが建設されています。

参考文献

- 菊池俊吉撮影『日本陸軍写真集（1）機械化部隊の主力戦車』（グリーンアロー出版社、1994年） ISBN 4-7663-3158-3
- 菊池俊吉撮影『日本陸軍の機甲部隊1 鋼鉄の最精鋭部隊千葉戦車学校・騎兵学校』（大日本絵画、2008年） ISBN 978-4-499-22970-8

千葉陸軍戦車学校