陸軍特殊船

陸軍特殊船 (りくぐんとくしゅせん)

陸軍特殊船は、大日本帝国陸軍のために開発された特別な輸送船です。この船は、上陸用舟艇と上陸部隊を同時に運ぶ能力を持つことが最大の特徴であり、強襲揚陸艦の先駆けとされています。当初の計画には、航空機の輸送および発進能力も含まれていましたが、その実現には課題が残りました。

開発の背景

日清戦争および日露戦争を経て、日本軍は渡洋上陸作戦を通じて勝利を収めましたが、この戦略的な成功は船舶輸送が陸軍の責任であったことに起因しています。1910年に改正された海戦要務令では、「陸兵輸送は陸軍に属す」と明記され、陸軍の役割が明確にされました。上陸作戦の初期段階では、海軍陸戦隊が先導し、陸軍部隊が上陸する手法が取られていましたが、徐々に陸軍が主導権を握ることとなりました。

第一次世界大戦のガリポリの戦いを踏まえ、艦砲射撃の効果が低かったことが海軍の運用方針に影響を与え、陸軍が上陸作戦の核心となる道が開かれました。この過程で、敵前上陸を行うための自走舟艇や、上陸前後の掩護に関する要望が高まりました。この結果、陸軍は世界初の実用的な上陸用舟艇、小発動艇（小発）や大発動艇（大発）を開発しました。

七了口上陸作戦が成功したものの、舟艇の運用方法の煩雑さが問題視され、陸軍特殊船の開発が始まりました。この船は、舟艇と上陸部隊を同時に運ぶ能力を持ち、より効率的な上陸が可能となることを目指しました。

神州丸の建造

最初の陸軍特殊船として建造されたのが「神州丸」です。当初は陸軍による独自開発が予定されていましたが、船舶設計の経験不足から海軍艦政本部の支援を受けることになりました。「神州丸」の設計には、航空機の輸送能力も盛り込まれており、このコンセプトは陸軍の対米作戦計画と密接に関係していました。上陸後すぐに航空機を展開するための構想がありましたが、実現には至りませんでした。

「神州丸」は1933年に起工し、1935年に竣工しました。その設計では、最大30隻の大発を積むことができ、2,000名の上陸部隊を収容可能でした。この成功を受けて、陸軍は追加の船舶を計画しましたが、予算の制約から11隻の建造にとどまりました。

量産化と設計の変更

新たに建造された船舶は、外観が一般的な貨客船に似せられ、甲型と名付けられました。4隻は、航空運用能力を目指した丙型として設計され、着艦能力は持たず、飛び立った航空機はそのまま陸上の飛行場へ送り込む計画がありました。しかし、航空機の高性能化による重量増加により、「神州丸」の簡素な装備では運用が難しい状況となり、設計は変更を余儀なくされました。

結果的に、陸軍特殊船は終戦までさまざまな役割を果たしましたが、戦局の変化に伴いその設計の目的が徐々に変わっていきました。最終的には航空機の輸送などに特化する形で運用されることとなりました。

まとめ

陸軍特殊船は、大日本帝国陸軍の上陸作戦において重要な役割を果たした特異な船であり、当時の戦略と技術の進化を象徴する存在です。設計と運用の複雑さを乗り越える努力の中で、特に航空機の運用能力が求められた一方で、実現は難しかったことが今も歴史に残る教訓となっています。

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