階層型ストレージ管理

階層型ストレージ管理 (HSM) とは

階層型ストレージ管理（Hierarchical Storage Management, HSM）は、データストレージを効率化するための重要な技術です。これは、データの利用頻度や重要度に応じて、異なる速度とコストのストレージ媒体間でデータを自動的に移動させる仕組みを指します。HSMの主な目的は、ストレージコストを削減しつつ、必要なデータへのアクセス速度を維持することです。

HSMの概要

高速なストレージデバイス（例：ディスクアレイ）は、低速なデバイス（例：光ディスクや磁気テープ）に比べて、バイトあたりのコストが高くなります。理想としては、すべてのデータを高速デバイスに保存したいところですが、現実的には非常に高価になります。HSMは、大量のデータを低速デバイスに保存し、必要に応じて高速デバイスにコピーすることで、この問題を解決します。高速デバイスは、大容量の低速デバイスのキャッシュとして機能します。

HSMは、データの利用状況を常に監視し、どのデータを低速デバイスに移動し、どのデータを高速デバイスに残すかを最適に判断します。また、長期保存が必要なデータを堅牢にアーカイブする目的でも利用されます。

一般的に、利用頻度の高いデータはディスクドライブに保存され、一定期間（数ヶ月程度）アクセスされないデータはテープなどの低速メディアに移動されます。この際、ディスク上のデータは削除され、テープ上のデータへのリンクファイルが残されます。テープ上のデータが必要になった場合は、自動的にディスクに復元されます。これにより、ユーザーはデータの保存場所を意識する必要がなく、ストレージ容量を大幅に増やすことができます。ユーザーが感じるのは、データ復元時の速度の違いのみです。

HSMの歴史

HSMの概念は古く、商業用データ処理の初期から存在していました。ストレージや通信技術の進歩に伴い、データのサイズやアクセス時間の規模は劇的に変化しましたが、HSMの基本的なコンセプトは変わっていません。初期のHSMはIBMのメインフレームで実装され、DFHSM（現在はDFSMShsm）と呼ばれていました。1974年にはIBM 3850 Mass Storage Facilityが発表され、その後、HSMはAIX、Solaris、HP-UX、LinuxなどのUnix系OSに移植されました。また、DEC VAX/VMSシステムやAlpha/VMSシステムにも実装されています。

近年では、Serial ATA（SATA）ディスクがThree-Stage HSMで利用されるようになりました。データは高性能なStorage Area Networkデバイスから、安価なSATAディスクアレイに移動され、最終的にはテープに移動されます。最新の実装では、ハードディスクドライブ（HDD）とフラッシュメモリも利用されています。フラッシュメモリはHDDよりも高速であり、HDDはコストが低下しているため、両方ともHSMの選択肢として検討されています。

HSMのユースケース

HSMは、長期間データを低コストでアーカイブするために頻繁に利用されます。テープライブラリのロボット技術を活用することで、大量のデータを低消費電力で効率的に格納できます。また、高速ディスクにデータの一部を置き、残りをテープに保存するソフトウェアも存在し、インターネットでのビデオストリーミングなどで活用されています。動画の先頭部分を即座に配信し、その間にロボットがテープカートリッジを探し出し、残りの部分をストリーミングします。これにより、大規模なコンテンツ配信システムでのディスクコストを削減できます。

ティアードストレージ

HSMは、ティアードストレージとも呼ばれます。これは、価格、性能、容量、機能の異なる複数のストレージ層で構成される統合的なストレージ環境を指します。ストレージティアは、ベンダー、アーキテクチャ、ジオメトリだけでなく、これらの要素に基づいて区別されます。以下にいくつかの例を示します。

ディスクとテープ：これらは上記の4つの要素すべてが異なります。
古いディスクと最新ディスク：これらは上記の1つ以上の要素が異なります。
高性能ディスクと安価/低速ディスク：両者の容量と機能が同じ場合でも、上記の2つの要素が異なります。

HSMの実装

HSMは、専用のソフトウェア、アプライアンス、サービスを通じて実装されます。これらの製品は、データの自動的な移動や管理を行います。

ファイルグルーミング

上位層（例：ディスクドライブ）から下位層（例：光ディスク）にデータを移動した後、上位層のファイルを削除する処理をファイルグルーミングと呼ぶことがあります。

関連項目

アーカイブ (コンピュータ)
バックアップ
ハードディスクドライブ
フラッシュメモリ
磁気テープ
テープドライブ
テープライブラリ
Linear Tape-Open
IBM 3592

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