随身

随身（ずいじん）

随身とは、平安時代以降に貴族の外出時に警護のために随従した近衛府の官人のことです。彼らは令外官として、特別な役割を担っていました。

随身の役割と変遷

随身は、左右近衛府の舎人、つまり将曹・府生・番長・近衛などから選ばれました。上皇・法皇、摂政・関白といった高位の貴族や、近衛府の大将・中将・少将、衛府・兵衛の長官や次官などに付き従い、その身辺警護を行いました。

当初は衛府の高官を警護するという、衛府の官人としての本来の職務でしたが、時代が下ると特に摂関に対しては特別の勅許をもって「聴される」一種の優遇と化していきました。この慣例が他の貴族階級にまで広がり発展していったのです。また摂関の随身には、実戦で使うための弓や矢などの武器が与えられ、兵仗（ひょうじょう）という言葉が随身の別表現として定着しました。後代になると「帯剣」や「牛車」などと同様に、「随身・兵仗」は摂関をはじめとする高位の官人に対する特権として認識されるようになりました。

上皇の随身は特に御随身（ごずいしん）と尊称されました。また中少将や衛門・兵衛佐など本府随身の他に召し使うものを小随身（しょうずいしん）、近衛府に属さないで個人が召し出すものを散所随身（さんじょずいしん）と呼びました。

摂関の随身は変遷を経て、藤原頼通の時代以降は、左右近衛府生各1名、近衛各4名、計10名が定員となりました。一方、上皇の随身は、朱雀・円融両上皇の時代には左右近衛番長各1名、近衛各4名、計10名でしたが、後には左右近衛将曹・府生・番長各1名、近衛各4名、計14名を定員としました。その他、大臣大将は8名（府生1名、番長1名、近衛6名）、大納言大将は6名（番長1名、近衛5名）、中納言中将から少将は衛府長1名に小随身2名または4名でした。

随身の世襲化と変質

随身は朝廷に属する官人でしたが、職務の性質上、警護を担当する主との人的関係が緊密になり、その関係が私的で主従的なものへと変化していきました。特に摂関政治から院政期にかけてその傾向が強まり、随身は摂関家や院の家人と化すようになり、世襲化も進みました。この時代に随身の家柄は下毛野・秦・中臣などの数氏に固定するようになり、近衛府から事実上独立した存在となりました。さらに院政期においては院司の一部として院の家政をも担当するようになりました。

著名な随身

壬生忠岑 - 平安時代、藤原定国の随身。『大和物語』に登場します。
下毛野公時 - 平安時代、藤原道長の随身。童話「金太郎」のモデルといわれています。
下毛野公忠 - 平安時代、藤原頼通の随身。
秦公春 - 平安時代、藤原頼長の随身。
* 秦重躬 - 鎌倉時代、後宇多上皇の随身。『徒然草』に登場します。

神道における随身

日本の神道においては、神を守る者として安置される随身姿の像のことも「随身」といい、この場合は随神とも書かれます。門守神（かどもりのかみ）、看督長（かどのおさ）、矢大神・左大神とも呼ばれます。神社の門のうち、門の左右に随身を安置した門のことを随身門・随神門（ずいしんもん）と呼ぶことがあります。

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