隠岐騒動

隠岐騒動（うんぱんそうどう）の詳細解説

隠岐騒動は、慶応4年（1868年）に松江藩が実効支配していた隠岐国で発生した、島民による自治運動です。別名、雲藩騒動とも呼ばれます。この騒動は、島民が松江藩の郡代を追放し、約80日間にわたる自治を行ったという、特筆すべき出来事でした。

騒動の背景

江戸時代、隠岐は幕府の直轄領でしたが、松江藩の預地となっていました。この状況下で、隠岐の人々は独自の動きを見せ始めます。中村出身の中沼了三は、天保6年（1835年）に上京し、儒学を学んで私塾を開きました。彼の塾には、隠岐出身の若者たちが集まり、中西毅男などが輩出されました。中西は帰郷後、「膺懲館」という私塾を開き、教育活動を行いました。

嘉永5年（1853年）の黒船来航以降、隠岐にも外国船が現れるようになり、松江藩は対応に苦慮しました。文久3年（1863年）には、隠岐の軍備増強のため農兵制が導入されましたが、疫病や凶作による食糧難と米の高騰が島内を苦しめ、慶応元年（1865年）には打ちこわしが発生しました。農兵の暴動を恐れた松江藩は、慶応3年（1867年）に農民の武器所持を禁じ、農兵隊を廃止しました。

中沼了三は、元治元年（1864年）に大和国に「文武館」を設立していました。慶応3年（1867年）に隠岐に戻った中西は、井上甃介らとともに松江藩の郡代に「文武館」設置の嘆願書を提出しましたが、認められませんでした。直訴も拒否されたため、島民たちは徳川慶喜への直訴を決意し、京都へ向かいましたが、王政復古を知り帰島しました。

一方、松江藩の役人が、隠岐が朝廷御領に移されたことを記した書状を、庄屋らに渡る前に開封していたことが発覚しました。

郡代追放と自治

慶応4年（1868年）3月15日、国分寺での会合で、島民の意見は郡代追放を主張する「正義党」と反対する「出雲党」に分かれました。その後、正義党が郡代追放を決定し、3月19日には約3000人の住民が郡代の陣屋を取り囲み、島外退去を迫りました。翌日、郡代は隠岐を離れ、以後、総会所が設置され、島民による自治が始まりました。

自治組織は、『隠岐島誌』によると、総会所頭取、会議所、周旋方、文事頭取、軍事方頭取など、様々な役割が分担されていました。

騒動のその後

中西毅男は、明治政府に自治の認定を求めましたが、思うような回答は得られませんでした。松江藩は隠岐の奪還を画策し、新政府から隠岐取締りの指令を受けました。松江藩兵が上陸し、戦闘の末に陣屋を奪還しましたが、新政府は島民の取締りに兵力が用いられたことを問題視し、監察使を派遣しました。鳥取藩などの協力もあり、松江藩は最終的に藩兵側から発砲したことを認めました。その後、鳥取藩が隠岐の取締りを引き継ぎ、隠岐県設置により管轄が終了しました。

明治4年、島民と松江藩双方の騒動に関係した者が罰せられ、一連の騒動は決着しました。

隠岐騒動は、幕末の動乱期における地方の自治意識の高まりを示す事例として、歴史的に重要な意味を持っています。島民たちの勇気ある行動は、その後の日本の地方自治のあり方に影響を与えたと言えるでしょう。

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