隣人13号

『隣人13号』は、井上三太による日本の漫画作品であり、2005年には劇場用映画も公開されました。通称は「隣13（りんじゅうさん）」と呼ばれています。

概要

本作は、いじめと解離性同一性障害（二重人格）を題材にしたサイコ・スリラーです。ただし、写実的に描かれているわけではなく、カリカチュア化された表現が用いられています。井上作品の特徴ともいえる個性的な脇役が多数登場することも魅力の一つです。

舞台は神奈川県藤沢市とその周辺ですが、主人公がいじめを受けていた小学校は東京都内にあると推測されます。

1993年より漫画雑誌『コミックスコラ』に連載が開始されましたが、1994年に同誌が休刊となり、一時中断されました。その後、インターネット上で続編が掲載され、ソニー・マガジンズより単行本（全3巻）が発刊されました。その後、単行本はソニー・マガジンズからコミック事業を継承した幻冬舎コミックスより発行されています。

執筆のきっかけは、作者である井上三太が過去に体験した恐怖体験に基づいています。半裸姿の近所の男性に部屋の窓を石で割られ、友人宅に避難して戻ると、金属製のドアが激しく破損されていたという出来事が、本作のインスピレーションとなりました。

ストーリー

建設作業員の村崎十三は、小学生時代に同級生の赤井トールから酷いいじめを受け、硫酸で顔を焼かれるという凄惨な経験をしました。その瞬間、臆病な十三の心の中に、凶暴な別人格「13号」が宿ることになります。

13号は、硫酸をかけた赤井への復讐を誓い、赤井の住むアパートに引っ越します。そして、十三を脅迫しながら、今は平穏な家庭を築いている赤井に接近していきます。建設現場のリーダーとなっていた赤井は、相変わらずの性格で、十三が同級生であったことすら忘れており、新入りの彼をいじめます。

復讐の実行段階に至っても消極的な十三を、13号は脅迫し、徐々に十三の人格を乗っ取っていきます。そしてある時、些細なトラブルから隣居の中年男性を惨殺してしまいます。警察は中年男性が金銭面でトラブルを抱えていたことに注目して捜査を始めますが、孤高の老刑事ビデさんは、長年の勘から十三に目をつけます。

そんなある日、いじめに耐えかねた13号は、赤井に閉じ込められた簡易便所のドアを破壊します。この暴挙は赤井を驚かせると同時に、十三同様にいじめの標的となっていた気弱な作業員・関肇を感嘆させ、心酔させます。関と親しくなった十三は、関に自身の過去と13号が計画する恐るべき復讐を打ち明けてしまいます。

そして、順調に進んでいるように思われた復讐計画は、次第に狂い始めていくのです……。

登場人物

村崎十三: 本編の主人公。過去のトラウマから、臆病で消極的な性格。顔の傷を隠すため、ビニール製の仮面を被っています。
13号: 十三の心に巣食う別人格。短気で暴力的、残忍な性格で、復讐のためには手段を選びません。十三の体を乗っ取り、驚異的な身体能力を発揮します。
赤井トール: 過去に十三をいじめていた張本人。現在は建設会社の作業員。陰湿で狭量な性格は変わらず、弱い者いじめを繰り返します。しかし、身内には優しく、家庭では良き夫、良き父親という一面も持ち合わせています。
赤井のぞみ: トールの妻。元レディースのリーダー。かつては荒れた生活を送っていましたが、現在は常識的で温和な母親となっています。
赤井勇気: トールとのぞみの息子。3歳。人懐っこい性格ですが、13号に殺害されてしまいます。
関肇: 十三の同僚で友人。赤井にいじめられています。アニメーターを目指していますが、夢破れそうです。13号の秘密を知ってしまったため、殺害されます。
死神: トールの暴走族時代の後輩。トールに心酔し、常に付き従っています。
ビデさん: 定年退職間近の老刑事。一匹狼として捜査を進めます。長年の勘から十三に目をつけます。

書籍情報

単行本
スコラ版、ソニー・マガジンズ版、幻冬舎コミックス版の3種類が存在します。
文庫版
幻冬舎コミックスから刊行されています。
廉価版
幻冬舎コミックスから「バーズコミックスリミックス」として刊行されています。

映画

2004年に井上靖雄監督によって映画化されました。13号役は中村獅童、村崎十三役は小栗旬が演じました。2005年 4月2日に公開され、R-15指定となっています。

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