隼人塚

隼人塚（はやとづか）

鹿児島県霧島市隼人町内山田に位置する隼人塚は、仏教に関連する遺跡であり、国の史跡として指定されています。この場所は、高さ2メートルの丘の上に3基の五重石塔が立ち、その周囲を4体の武人石像が守るという独特な構造をしています。

構造

かつては、石塔は倒壊しており、武人像の一部は塚から離れた場所に埋もれていました。しかし、発掘調査によって欠落部分が発見され、石塔は五重の姿に復元されました。中央の石塔は高さ6.6メートル、両脇の2基は約5.5〜5.6メートルです。頂部の相輪は発見されなかったため、西日本の石塔を参考に復元されています。軸石には仏像が彫られており、その様式は平安時代から奥州藤原氏の仏教美術に見られる特徴を持っています。

武人石像は四天王像であり、持国天像は復元前から立っていましたが、増長天像は一時持ち出された後、1915年に戻されました。また、広目天像と多聞天像は、離れた場所に埋もれていた状態から発見されました。さらに、発掘調査では、どの石像にも接合しない石像の部材や邪鬼台座の部材も出土しています。

由来

鹿児島神宮の社家に伝わる『桑幡家文書』には、1737年の写本に「放生会の大路に五重の石塔三基、四天王の石像あり」と記されており、このことから、隼人塚は南北朝時代初期には存在していたと考えられています。

発掘調査以前には、隼人塚の由来について以下のような様々な説がありました。

1. 和銅元年説: 熊襲の祟りを鎮めるために708年に作られたという説です。
2. 養老4年説: 720年の隼人の反乱における死者の慰霊のために作られたという説です。
3. 正国寺跡説: かつてこの地にあった正国寺という寺院の仏塔跡であるという説です。隼人塚付近には「菩提寺」という小字が残っており、正国寺は尼寺であったとされています。
4. 廃仏毀釈の跡説: 明治維新以降の廃仏毀釈で壊された仏塔や石塔を寄せ集めたという説です。

しかし、発掘調査の結果、寺院の遺構は確認されなかったものの、塚を囲む二重の石垣や石塔の基部が発見され、他の場所からの移築説は否定されました。さらに、1142年の銘を持つ石仏が発見されたことから、隼人塚は平安時代後期に正国寺の前身寺院として作られたという説が有力になっています。

隼人塚という名称は、鹿児島神宮の神主であった桑幡公幸が1903年の著作で初めて使用しました。それ以前は、軍神塚や将軍塚、熊襲塚などと呼ばれていました。

修復と保存

1970年に石塔の積み直しとモルタルによる修復が行われましたが、風雨による劣化とモルタルによる外観の損傷が目立ったため、1992年から整備事業が開始されました。1994年からの発掘調査を経て、石塔の復元、石像の再配置、修復が行われ、2000年に整備が完了しました。

もう1つの隼人塚

江戸時代の地誌『三国[[名勝図会]]』には、現在の隼人塚から約4キロメートル北東の国分重久付近にも「隼人塚」が紹介されています。ここは、かつては鬱蒼とした森であったとされますが、現在は水田となっており、石碑が建てられています。この場所は、720年の隼人の反乱で亡くなった人々の遺体を埋めた場所とされ、首塚とも呼ばれています。周辺には、関連性を示す「真板田」や「猪切薮」といった地名が残っています。近くには、隼人の神々を祀っていたとされる止上神社があり、かつては隼人の霊魂を鎮める祭りが開催されていました。

文化財

国の史跡

隼人塚: 1921年3月3日指定

関連文化財

正国寺跡石仏 3躯: 鹿児島県指定有形文化財（彫刻）、隼人塚史跡館保管、1997年4月21日指定。
鹿児島神宮四天王石像: 霧島市指定有形文化財（歴史資料）、隼人塚史跡館保管、1994年6月7日指定。

脚注

外部リンク

隼人塚 - 国指定文化財等データベース（文化庁）
* 文化財【隼人】 > 隼人塚 - 霧島市ホームページ

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