集異志

『集異志』の概要とその特徴

『集異志』（しゅういし）は、晩唐時代に著された陸勲による怪異譚を集めた著作であり、全2巻から構成されています。この作品は、その怪異物語の内容に加え、犬にまつわる記録が多く含まれている点が特に特徴的です。全32則からなる作品であり、晁公武が述べたところによれば、その内の約三分の一が犬に関する怪異を含んでいるとのことです。

『集異志』の完全な原本は現在伝わっていませんが、『太平広記』という書物にはこの作品の逸文が引用されています。興味深いことに、『太平広記』におけるタイトルは「集異記」となっており、これは別の作品が存在することを示唆しています。南宋の著者である晁公武の『郡斎読書志』においても「陸氏集異記」として紹介されていますが、『宋史』の芸文志では『集異志』として記録されています。

この作品の成立時期については、陸勲が吏部や刑部で官をしていた晩年、主に懿宗の咸通末年頃（9世紀前半）と考えられています。特に、晁公武の記述によれば、陸勲が編纂したこの作品では犬の怪異が多数描かれており、その大半が飼い主に忠実な犬たちの物語として表現されています。このことは、むしろ当時の社会情勢や人々の感情、あるいは忠誠心を暗示した寓話のような側面もあると考えられます。

別の類似作品との比較

『集異志』と同名の作品が複数存在する中で、混乱を招く部分があることも否めません。南朝宋の郭季産や中唐の薛用弱による同名集もあり、特に薛集は同じ唐代に成立しています。そのため、これらの作品と『集異志』を区別することは容易ではありません。李剣国は、文体や内容から異なる時代に成立した作品であると判断し、本集に関する規定を行っています。彼は『太平広記』から『集異志』に帰属すると思われる記録を抜き出し、素直な文体で語られた鬼魅の姿を描写しています。

特に注目すべきは、晁公武が指摘した犬の怪異であり、それらがどのように人間の感情を映し出しているのかという点です。犬たちの忠義や愛情は、単なる怪異譚にとどまらず、人間社会における感情の反映でもあるという見方が成り立つでしょう。

偽書や別本の存在

明の時代には、陳継儒の蔵書に「唐比部郎中陸勲集」と記された『集異志』が存在しましたが、これは実際には偽書であるとされています。この偽書は、4巻構成になっており、239則から成り立っていますが、晁公武の言う32則に比べると内容が多岐にわたり過ぎるため、著者の意図とは異なるものとされます。このような背景から、この4巻本には他の文献からの摘録が混在しており、本来の『集異志』とは明らかに異なる内容となっています。

そのため、学術的な解析においては、原本の存在が確認されていない限り、慎重な形式で研究が進められる必要があります。さらに、この偽書に基づいて1巻本がまとめられたことも確認されているため、文献としての信頼性は重要な課題となります。

結論

『集異志』は、中国文学における貴重な志怪譚として位置づけられ、多様な解釈が可能な独特の作品です。その文体や登場する事例を通して、当時の文化や価値観を知る手掛かりとなるだけでなく、文学としての魅力も兼ね備えた一冊であると言えるでしょう。

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