雌阿寒温泉

雌阿寒温泉

北海道足寄郡足寄町に位置する雌阿寒温泉（めあかんおんせん）は、雌阿寒岳の山腹にひっそりと湧き出す温泉地です。日本でも有数の硫黄泉として知られ、古くから人々に利用されてきた歴史を持つ秘湯の一つに数えられます。

泉質と特徴

雌阿寒温泉の主な泉質は単純硫黄泉などです。源泉温度は50℃から80℃と比較的高温で供給されます。湯色は源泉かけ流しの状態では無色透明ですが、湯に含まれる成分が空気に触れることで湯の花が発生し、白濁することがあります。この湯の花が、硫黄泉らしい風情を醸し出しています。

温泉地の現状

雌阿寒温泉は、活火山である雌阿寒岳の噴火口から見て北西方向の山腹に点在しています。かつては複数の旅館や施設がありましたが、現在は宿泊が可能な「山の宿 野中温泉」を中心に、日帰り入浴施設となった旧野中温泉ユースホステル、そして休業中の「景福」などが存在しています。

「山の宿 野中温泉」は、開湯から100年以上の歴史を持つ湯治宿として、多くの温泉ファンに親しまれてきました。しかし、近年（2025年1月）に発生した火災により、その建物はほぼ全焼という大きな被害を受けました。今後の再建などが待たれる状況です。

かつては宿泊も可能だった野中温泉ユースホステルは、2011年3月末をもって宿泊営業を終了し、以降は日帰り入浴施設として運営されていました。

「景福」は「オンネトー温泉」と名乗っていますが、雌阿寒温泉とは隣接しており、泉質も類似しているため、しばしば一体の温泉地として扱われます。しかし、2014年10月に施設内で痛ましい事故が発生したため、自主休業が続いています。

温泉地から約200メートルほど道路を下った場所には、雌阿寒岳への主要な登山口の一つである「雌阿寒温泉登山口」があり、登山拠点としても利用されています。

歴史

雌阿寒岳の西麓では、古くからミネラルを豊富に含む温泉が湧き出ており、アイヌの人々によって利用されていたと言われています。

近代における雌阿寒温泉の歴史は、足寄町（オンネトー魅力創造委員会）の報告書によると、1913年（大正2年）に野中増次郎氏によって開湯されたことに始まります。翌1914年（大正3年）には、野中一家がこの地に最初の温泉旅館を開業しました。これを機に周辺に旅館が増え始め、現在の「雌阿寒温泉」として認知されるようになりました。

昭和中期にかけて温泉地は発展し、1950年代から1960年代にかけて、ユースホステル（1956年）、景福（1958年）、国民宿舎（1960年）、阿寒富士荘（1963年）、野中温泉別館（1969年）といった施設が次々と開業しました。

1973年（昭和48年）3月30日には、環境庁（現・環境省）の告示により、国民保養温泉地としての指定を受けています。

しかし、2010年代以降、温泉地はいくつかの変化に直面します。2011年3月31日には、野中温泉ユースホステルが宿泊事業を終了し、日帰り入浴のみとなりました。さらに2014年10月には、「オンネトー温泉 景福」で痛ましい事故が発生し、以降、景福は休業を余儀なくされています。そして、長年にわたり温泉地のシンボル的存在であった「山の宿 野中温泉」も、2025年1月23日に発生した火災により大きな被害を受けました。

アクセス

雌阿寒温泉へは、近隣の阿寒湖温泉からバスが運行されており、所要時間は約20分です。阿寒湖温泉へのアクセス方法については、別途情報をご確認ください。

もう一度検索