離騒

『離騒』の概要

『離騒』は、中国の古代詩人屈原によって書かれたとされる詩で、代表的な作品としての地位を持つ詩です。この作品は375句から構成されており、長 編の抒情的叙事詩として中国では非常に重要な位置を占めています。本作は、屈原が自己の不遇と憤りを表現し、神秘的な幻想の世界への旅を描くことで知られています。

題名の意味

『離騒』という名称の意味については様々な解釈が存在しますが、確定的なことはわかっていません。『史記』では「騒」が「憂」を意味していると解釈されており、王逸の『楚辞章句』でも「離別の愁思」とされています。班固の解釈では「離」は「遭」を意味し「憂いに遭う」とされています。また、近代以降には様々な見解が提唱されており、その中には楚の曲に由来する見解も含まれています。

作者の背景

屈原は伝説上、讒言によって流刑にされ、その過程で『離騒』を創作したと言われています。司馬遷の『史記』にはこのことが記されていますが、現代の研究者たちは屈原と作品の関係について疑念を抱く意見もあります。日本の研究者岡村繁は、屈原は楚辞のヒーローであるものの実際の作者とは異なるとし、小南一郎は『離騒』を単なる自叙伝的な作品ではなく、多くの人々の心意を表現した叙事詩であると見なしています。また、後に屈原が王者になることを望む人物として描かれながらも、受け入れられない悲劇の忠臣としての解釈もされています。

形式と構成

『離騒』は374句から構成され、各句の長さは均等ではありませんが、大まかに奇数句と偶数句の形を持っています。全篇は十六の小段に分かれ、前段では屈原が自らの能力や誇りを述べ、後段では神秘的な旅に出ます。詩の形成上、助辞を用いた韻の変化が特徴的で、こうした文学形式は中国の詩歌の中でも珍しいものです。

あらすじ

『離騒』は名を正則、字を霊均という主人公の一人称で語られます。彼は顓頊の子孫であることや、自身の優れた才能を誇りに思っています。しかし、理想を持ちながらも彼は讒言により主君から遠ざけられ、利権を追う世間に対して抵抗を続けます。そして、彼は遠い旅に出る決心をします。彼を止める者もいますが、霊均は故郷から離れ、南方の聖者舜を訪れ、さらには天界へと旅を進めることになります。

道中、彼は様々な神々や伝説的な存在と遭遇し、求婚を試みますが、苦い結果に終わります。最終的に彼は故郷を思い、悲しみのあまり無力感に駆られるのです。このように『離騒』は屈原の内面的な葛藤を描きながら、深い哲学的テーマが織り込まれています。

結論

『離騒』は単なる詩としてだけでなく、屈原の人生や思想、さらには古代中国の文化についても考察する材料を提供する作品です。その形態や内容の独自性から、今なお多くの人々に影響を与える文学作品として尊ばれています。

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