雷丘

雷丘（いかづちのおか）

雷丘は、奈良県高市郡明日香村大字雷に位置する標高約110mの丘です。古くからその名が知られ、万葉集にも歌われています。

歴史

小墾田宮との関連

雷丘周辺は、飛鳥時代の宮殿である小墾田宮（おはりだのみや）の所在地として有力視されています。小墾田宮は推古朝および奈良時代の淳仁朝・称徳朝に使用された宮殿で、「小治田宮」とも記されます。近年の発掘調査から、雷丘とその周辺に宮殿があった可能性が高いと考えられています。

中世の城郭

雷丘には、中世の城郭と見られる跡も残っています。築城時期や築城者は不明ですが、丘の中央に主郭、南と東に曲輪、空堀を挟んで西側にも曲輪が配置された構造だったと考えられています。これらの城郭の建設により、飛鳥時代までの遺構は破壊されたと推測されています。

発掘調査

2005年の発掘調査では、埴輪の欠片などが見つかり、小子部栖軽（ちいさこべのすがる）の古墳墓である可能性や、後述する雷神伝説との関連が示唆されました。雷丘の東南麓では、飛鳥時代から奈良時代の遺跡が数多く発見されており、現在も発掘調査が続けられています。

伝説

雷丘には、雷神にまつわる伝説が残されています。

『日本霊異記』や『日本書紀』によると、雄略天皇の時代、家臣の少子部栖軽が天皇の寝所へ誤って入ってしまったため、天皇は彼に雷神を捕らえるよう命じました。栖軽は豊浦寺と飯岡の間にある丘に落ちていた雷神を捕らえ、天皇に献上しましたが、天皇は雷神の輝きに恐れをなし、元の場所へ返すように命じました。この雷神が落ちていた場所が雷岡（雷丘）と呼ばれるようになったと伝えられています。

数年後、小子部栖軽が亡くなると、雄略天皇はその忠義を讃え、丘に「取雷栖軽之墓」（雷神を捕らえた栖軽の墓）という墓標を建てました。しかし、雷神がこれを怒り墓標を踏み潰したところ、割れ目に足が挟まり抜けなくなってしまいました。天皇は雷神を逃がし、「生之死之捕雷栖軽之墓」（生前も死後も雷神を捕らえた栖軽の墓）と墓標を建て直したとされています。

周辺情報

雷丘周辺には、数多くの史跡や遺跡が点在しています。

雷ギヲン城址：雷丘の北約200mに位置する城跡
ギョ山
雷丘北方遺跡
雷丘東方遺跡
雷内畑遺跡
甘樫丘
水落遺跡
石神遺跡
小墾田宮跡
豊浦寺遺跡（豊浦宮、向原寺）
飛鳥寺
飛鳥板蓋宮（岡本宮）

アクセス

奈良交通バス「飛鳥」または「豊浦」下車、徒歩約5分。

雷丘は、古代の歴史と伝説が色濃く残る場所であり、周辺の史跡と合わせて訪れることで、飛鳥時代のロマンを感じることができます。

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