雷 (吹雪型駆逐艦)

駆逐艦「雷」の生涯

誕生と初期

「雷」（いかづち）は、日本海軍が誇る吹雪型駆逐艦の23番艦として、浦賀船渠で1930年（昭和5年）3月7日に起工され、1932年（昭和7年）8月15日に竣工しました。同名の艦としては、雷型駆逐艦に続き二代目となります。

1933年（昭和8年）には、昭和三陸地震の発生に伴い、僚艦「電」と共に被災地へ急行し、救援活動を行いました。その後、1941年（昭和16年）にかけて、九三式探信儀や九一式方位盤などの装備が施され、対空兵装の強化も計画されましたが、資材不足により実現には至りませんでした。

太平洋戦争開戦

太平洋戦争開戦時には、「暁」、「電」、「響」と共に第六駆逐隊を編成し、第一水雷戦隊に所属しました。香港攻略戦では、艦隊旗艦である軽巡洋艦「五十鈴」や「電」などとともに海上からの包囲を担当し、イギリス軍哨戒艇を撃沈しています。

1942年（昭和17年）にはメナド攻略戦に参加し、マヌイ島沖で潜水艦の雷撃を回避しつつ、爆雷攻撃でこれを撃退。この潜水艦は、後に消息不明となるアメリカ海軍の潜水艦「シャーク」であったとする説があります。

スラバヤ沖海戦と人道的行為

3月1日には、スラバヤ沖海戦で重巡洋艦群などと共にイギリスの重巡洋艦「エクセター」などを撃沈する戦果を挙げました。しかし、翌日には、艦長工藤俊作少佐の指示のもと、「電」と協力し、撃沈した敵艦の生存者422名を救助しました。この際、救助した英兵たちを丁寧に処遇したことは、特筆すべき人道的行為として知られています。

その後、フィリピン方面へ移動し、アメリカ潜水艦への攻撃にも参加しています。

アリューシャン作戦

修理後、「雷」は北方部隊に所属し、アリューシャン攻略作戦に参加しました。キスカ島への輸送任務中には、座礁した輸送船から緊急物資を移載し、同島の防衛強化に貢献しました。また、損傷した駆逐艦「霞」を曳航する任務も担当しましたが、この際に座礁事故を起こすなど、苦難の連続でした。

ガダルカナル戦線

ガダルカナル島の戦いが激化すると、「雷」は南方戦線に投入され、輸送作戦や艦砲射撃に従事しました。10月25日には、ルンガ泊地へ突入し、アメリカ軍の艦艇を撃沈するなど戦果を挙げましたが、その際に敵機の攻撃を受け損傷しました。

第三次ソロモン海戦

11月12日には、第三次ソロモン海戦に参加し、戦艦「比叡」の前方で激しい砲撃戦を繰り広げました。この戦闘で、「雷」は多数の命中弾を受け、甚大な損傷を被りましたが、辛うじて戦線を離脱。その後、修理のため日本本土へ帰還しました。

その後

修理を終えた「雷」は、再び北方部隊に編入され、輸送作戦に従事しました。アッツ島沖海戦にも参加しましたが、目立った戦果は挙げられませんでした。その後、船団護衛任務に転じ、日本本土とトラック間の輸送任務を担いました。

1944年（昭和19年）に入ると、対潜兵装や電波探知機を装備する近代化改修を受けました。また、マリアナ諸島防衛強化のための輸送作戦にも参加し、サイパン島への輸送任務にも従事しました。

壮絶な最期

1944年（昭和19年）4月13日、「雷」はサイパン島への輸送任務中、アメリカ潜水艦「ハーダー」の奇襲を受け、魚雷攻撃により撃沈されました。艦長の生永邦雄少佐以下、乗員238名全員が戦死するという壮絶な最期を迎えました。

同年6月10日、「雷」は艦艇類別等級表から削除され、その短い生涯を終えました。

慰霊

岩手県盛岡市にある聖寿寺には、「雷」乗員の慰霊碑が建立されています。

歴代艦長

「雷」は、その短い艦歴の中で、多くの艦長によって指揮されました。

艤装員長

大藤正直 中佐：1931年12月1日 - 1932年5月14日
佐藤慶蔵 中佐：1932年5月14日 -

艦長

佐藤慶蔵 中佐：1932年8月15日 - 1932年11月15日
手束五郎 少佐：1932年11月15日 - 1934年11月1日
伊集院松治 少佐：1935年11月1日 - 1935年11月21日
則満宰次 中佐：1935年11月21日 - 1936年12月1日
竹内虎四郎 少佐：1936年12月1日 - 1937年12月1日
柳川正男 中佐：1937年12月1日 - 1938年8月1日
戸村清 少佐：1938年8月1日 - 1939年10月15日
折田常雄 少佐：1939年10月15日 - 1940年11月1日
工藤俊作 少佐：1940年11月1日 -1942年8月12日
前田実穂 少佐：1942年8月27日 -
* 生永邦雄 少佐：1943年10月25日 - 1944年4月13日（戦死）

まとめ

駆逐艦「雷」は、その短い生涯の中で、多くの海戦や作戦に参加し、数々の戦果を挙げました。また、スラバヤ沖海戦での人道的行為は、特筆すべきものとして語り継がれています。しかし、その最期は、アメリカ潜水艦の攻撃によってあっけなく幕を閉じ、乗組員全員が戦死するという悲劇的なものでした。駆逐艦「雷」の生涯は、戦争の悲惨さと、その中で生きた人々の勇気を今に伝えるものです。

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