電凸

電凸（でんとつ）とは

電凸（でんとつ）とは、企業、マスコミ、宗教団体、官庁、政治家、政党などに対して、電話をかけるなどして組織としての見解を問いただす行為を指します。これは、一般市民が主体となり、社会的な問題や疑問に対して、直接的なコミュニケーションを通じて、その真相を明らかにしようとする行動です。

定義

電凸は、「電話突撃取材」という言葉が短縮されてできた略語とされています。元々はインターネットスラングで、2004年に2ちゃんねるのハングル板で「電話突撃隊出張依頼所」というスレッドが立ったことが起源とされています。この行為は「電凸する」と動詞化して表現されることもあり、さらに「凸（とつ）る」や「凸」と略されることもあります。

電凸を行う主体は、一般市民である個人、または一般市民の声を代弁する（と自認する）団体です。報道機関やジャーナリストが行う「取材」とは異なり、電凸はあくまで一般市民の視点からの問いかけです。単なるクレームや中傷、イタズラ電話と区別するために、事前に公開質問状を送付するなどして、身元を明らかにして「正々堂々と」電話をかけることが一般的です。しかし、電凸と単なるクレーム行為は明確に区別できない場合も多いのが現状です。

目的

電凸の主な目的は、テレビ、ラジオ、新聞、インターネットメディア、書籍などで発信された情報に対して、その発言者や発表団体に連絡を取り、その表現についての当事者見解を引き出したり、真意を問いただすことです。社会的に物議を醸す発言や表現に対して、一般市民が直接的に意見を表明し、説明を求める手段として用いられます。

手法

電凸は、一般用の問い合わせ窓口を通して行われることが多く、広報担当者やその上司が対応することが一般的です。物議を醸した発言・行動の当事者から直接返答があることは少ないのが現状です。電話以外にも、メールを用いた「メル凸」という手段も存在します。また、電凸の過程を記録するために、通話内容を録音し、その記録や音声ファイルをインターネット上で公開することもよくあります。

電凸がインターネット上で広まると、専用のまとめサイトが作成され、効果的な電凸・メル凸のためのマニュアルが共有されることがあります。これらのサイトでは、通話録音や動画、公開質問状、連絡先、写真など、さまざまな情報が共有されます。しかし、個人情報が誤って拡散されるケースもあり、肖像権侵害や著作権侵害などの問題も発生しています。電凸を行う際には、法的責任を問われる可能性があることを理解しておく必要があります。

電凸は日本だけでなく、アメリカ合衆国や韓国でも報告されており、近年では中国からの電凸も見られるなど、グローバルな現象となっています。

歴史

かつては、個人が抗議の意思を示す手段は限られていました。しかし、インターネットの普及により、個人が意見や証拠を発信することが容易になり、電凸という手段が定着しました。1999年の東芝クレーマー事件は、音声ファイルをインターネットで公開した初の事例として、電凸の歴史において重要な転換点となりました。この事件以降、不祥事や問題のある言動に対する追及手段として、電凸が一般的に用いられるようになりました。

近年では、電凸の対象がマスメディアの情報からインターネット上の情報に移る傾向も見られます。これは、ブログやSNSなどで発信された情報が社会的な議論を呼ぶことが増えたためです。

影響力のあった電凸の事例

毎日デイリーニューズWaiWai問題（2008年）

毎日新聞社の英語報道メディアが、事実と異なる低俗な記事を掲載していた問題で、大規模な電凸が行われました。広告が全面停止になるなどの影響があり、毎日新聞社は正式に謝罪しましたが、その対応も物議を醸しました。

スマイリーキクチ中傷被害事件（2009年）

スマイリーキクチがネット上でデマを流されたことが発端となり、誹謗中傷や脅迫が相次ぎました。放送局や所属事務所に異常な数の電凸が押し寄せ、キクチ自身も仕事の番宣が書けなくなるなどの影響を受けました。

大津いじめ自殺事件（2012年）

中学校に抗議の電凸が殺到し、学校が電話番号を削除する事態となりました。ウェブ上で関係者を特定しようとする動きが広がり、無関係の一般人が「加害者の親族」と誤って特定され、個人情報が拡散されるなど、大きな問題となりました。

日本テレビのドラマ「明日、ママがいない」問題（2014年）

ドラマの内容が社会的に問題視され、スポンサー企業やBPOに電凸が行われ、スポンサーがCM放送を取りやめる事態となりました。電凸が制作現場に影響を与えていることが指摘されました。

朝日新聞の慰安婦誤報問題に関連した北星学園大学への電凸（2014年）

朝日新聞が慰安婦問題に関する記事を誤報と認めたことで、当時記事を執筆した元記者が非常勤講師を務める北星学園大学に問い合わせが殺到しました。大学は、学問の自由を尊重しつつ、問い合わせに対して真摯に対応する姿勢を示しました。

まとめ

電凸は、一般市民が社会的な問題に対して意見を表明し、組織の責任を問うための有効な手段の一つです。しかし、その手法によっては、個人情報漏洩や名誉毀損などの問題を引き起こす可能性もあります。電凸を行う際には、法律やモラルを遵守し、慎重な行動が求められます。

脚注

詳細は、各事例に関する報道記事や関連資料を参照してください。

外部リンク

読売新聞コラム「モニ太のデジタル辞典」の電凸

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