電報略号

電報略号について

電報略号とは、電報において頻繁に用いられる語句や定型文を、より短い符号や文字に置き換えたものです。これにより、電報の作成・送信にかかる時間や費用を削減し、効率的な通信を可能にしました。電報サービスを提供する側と利用する側の双方で、様々な略号が考案・利用されてきました。

略号の種類

電報略号は、その目的や利用主体によっていくつかの種類に分類できます。

無線従事者が使用する略号

無線通信においては、作業効率の向上を目的として、頻繁に使用される語句や定型文に対して略語が用いられてきました。これには、規定されたQ符号や法令で定められた略符号（SOSなど）の他に、自然発生的に使用されるようになった電信略語があります。これらの略号は、電報略号とは区別されることが多いです。

サービス提供者が提供する略号

電報サービスを提供する事業者が、独自の略号を用意している場合があります。かつてはNTTが提供していた略号がその代表例です。

策定された略号

広く利用されることを目的として、コードブックの形で刊行されたものや、電報を頻繁に利用する組織が独自に定めた略号があります。これらの略号は、特定の業界や組織内でのコミュニケーション効率を高めるために役立ちました。

利用者から誕生した略号

電報は文字数に応じて料金が加算される従量制であったため、利用者同士の間で、できるだけ少ない文字数で正確に情報を伝達するための略号が工夫されました。これらの略号は、通信コストの削減に大きく貢献しました。

独自の略号

業務上、電報を頻繁に利用していた企業や団体では、独自の略号を考案して使用していました。これらの略号は、特定の業務における専門用語や頻出するフレーズを簡略化するのに役立ちました。

様々な分野の電報略号

電報略号は、様々な分野で利用されていました。以下に主な例を挙げます。

気象官署用電報略号: 気象台や観測所などとの連絡に使用される統一規格です。
鉄道電報略号: 旧国鉄や私鉄各社で使用されていた略号です。これらの略号は、鉄道業務における効率的な情報伝達に貢献しました。
商事電報略号: 商取引における情報伝達を効率化するための略号です。
人事院電報略号: 人事院が使用する略号です。
日本旅行協会電報略号: 旅行業界で使用されていた略号です。

略号の一例

NTTの文書に定められた略号の一例として、「年賀を内容とする和文無線電報」用のものがあります。これらの略号は現在では一般の通常電報では使用できませんが、かつては慶事などの際に広く利用されていました。

例として、以下のような略号がありました。

「新春」を「シン」と略す。
「賀正」を「カシ」と略す。

まとめ

電報略号は、電報通信の効率化に大きく貢献した重要なツールでした。様々な種類や目的の略号が存在し、それぞれの分野で効果的に活用されていました。電報サービスは現代においてはほとんど利用されていませんが、その歴史を振り返ることは、当時の通信技術や文化を理解する上で重要です。

参考文献

中央気象台編『気象官署用電報略号表』中央気象台、1953年。
中山久美『実用電報略号』誠文堂、1930年。
中山久美『商事電報略号 : 自査式二字制』大同書院出版、1952年。
人事院事務総局管理局庶務課文書係編『人事院電報略号表 昭和24年5月開始』人事院事務総局管理局庶務課文書係、1949年。
日本旅行協会編『電報略号集 : 昭和10年6月15日現行』日本旅行協会、1935年。
長田順行『暗号 : 原理とその世界』ダイヤモンド社、1971年。
長田順行『暗号』（増補・決定版）ダイヤモンド社、1979年。

関連項目

電報略号 (鉄道)
電碼

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