Q符号

Q符号（キューふごう）とは

Q符号（Q code）とは、国際的に無線通信において用いられるQを頭文字とする3文字の略記号のことです。単に略符号とも呼ばれます。主に通信文の短縮を目的として使用されます。

概要

Q符号は、国際電気通信連合（ITU）によって、その使用範囲が定められています。

- 海上業務用：QOA - QQZ
- すべての業務用：QRA - QUZ

国際民間航空機関（ICAO）も、かつては航空業務用にQAA - QNZを定めていましたが、1999年に廃止されました。ただし、一部は略語として残っています。日本国内では、総務省令無線局運用規則別表および告示で規定されており、QRA - QTZは識別信号には使用されていません。軍用無線では、北大西洋条約機構（NATO）が定義したものが使用されています。

Q符号は、もともとはモールス通信で通信文を短縮するために使われていました。そのため、音声通信では船舶無線や航空無線で一部が用いられる程度です。陸上通信では、特定の組織内でのみ使用されたり、未使用のQ符号に独自の意味を付与して使用されたりするケースが見られます。また、アマチュア無線では、QRA - QTHが日常的に使用されていますが、定義とは異なる意味で慣用されている場合もあります。

歴史

Q符号は、1909年にイギリスで制定されたのが始まりです。当初は船舶局および海岸局で使用されていましたが、海上通信での意思疎通を容易にするために国際的な統一が図られることになりました。

1912年の万国無線電信会議では、45のQ符号が提案され、そのうち12符号が採択されました。その後、Q符号の種類は増え続け、1970年代までには数百ものQ符号が定義されました。しかし、音声通信の普及により、20世紀末には航空業務用は一部を除き廃止され、モールス通信自体の使用も激減しました。現在では、海上業務用およびすべての業務用で定義が残っているものの、使用頻度は低くなっています。

無線局運用規則におけるQ符号の変遷

日本の無線局運用規則におけるQ符号は、制定当初から様々な変更が加えられてきました。以下に主な変遷をまとめます。

- 昭和25年（1950年）：無線局運用規則制定時にQRA〜QUXが定義されました。
- 昭和28年（1953年）：一般用Q略語に航空関係の注が追加され、航空用Q略語としてQAB〜QNYが定義されました。
- 昭和30年（1955年）：航空用Q略語にQKF〜QKM、QKO〜QKZ、QTMが追加されました。
- 昭和31年（1956年）：QNY、QUV、QUX、QBB、QDXの意義が変更されました。
- 昭和36年（1961年）：一般用Q略語がQRA〜QUYとされ、航空関係の注が本文に取り込まれました。
- 昭和38年（1963年）：QTMが航空用Q略語から削除され、一般用Q略語に取り込まれました。
- 昭和44年（1969年）：Q符号にQOA〜QOKが追加されました。
- 昭和47年（1972年）：周波数の単位がc（サイクル）からHz（ヘルツ）に変更されました。
- 昭和50年（1975年）：QUZが追加されました。
- 昭和59年（1984年）：QOOが追加されました。
- 平成10年（1998年）：QTFが削除されました。
- 平成11年（1999年）：航空移動業務に関する定義が変更されました。

航空用語

航空分野では、高度計規正値に用いられるQFE、QNE、QNHなどの航空用Q略語に由来する略語が定義されています。これらの略語は、航空業務手続（PANS）にも掲載されています。

アマチュア無線での慣用

アマチュア無線では、QRA - QTHが日常的に使われていますが、本来の定義とは異なる意味で使われることもあります。また、アメリカ無線中継連盟（ARRL）は、CW NETによる通信訓練のために、QNA - QNZに独自の意味を付与しています。これは航空用Q符号と重複があります。

アマチュア無線におけるQ符号の派生語

アマチュア無線では、Q符号を元にした様々な派生語が使われています。

- QRNN：人工雑音がひどいこと。
- QRP運用：小さな空中線電力での運用。ARRLやJARLでは5W以下と規定。
- QRPp運用：非常に小さな空中線電力での運用。JARLでは0.5W以下と規定。
- QSLカード：交信証。
- アイボールQSO：無線家が直接会うこと。
- ラバースタンプQSO：定型文のみで交信すること。

その他のQ符号の俗語

俗語として、ジョークのような意味で使われるQ符号もあります。

- QLF：下手な電信。
- QLZ：怠け者の通信士。
- QSC：タバコをくれ。
- QSJ：費用、コスト。
- QWM：求婚とその承諾。

まとめ

Q符号は、無線通信における効率化のための重要なツールです。その歴史は古く、様々な分野で利用されてきました。アマチュア無線では、独自の発展を遂げ、様々な慣用表現が生まれています。Q符号を理解することは、無線通信の世界をより深く理解する上で欠かせない要素と言えるでしょう。

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