電子交換機

電子交換機とは

電子交換機は、プログラム制御によって動作する電話交換機の一種です。特にアナログ信号を中継・交換するものを指し、アナログ電子交換機とも呼ばれます。この技術は、従来のクロスバー交換機に比べて、より柔軟で高速な通信サービスを提供するために開発されました。

歴史

電子交換機の歴史は、1960年代に米国のベル研究所で開発されたNo.1ESSに始まります。1965年に実用化され、公衆交換電話網に導入されました。日本では、1972年にD10形交換機が銀座局で、1973年にはD20形交換機が運用を開始しました。その後、デジタル[[交換機]]への移行が進み、1997年12月17日にNTT姫路支店管内で最後まで使用されていたものがデジタル[[交換機]]に置き換えられ、その歴史に幕を閉じました。

特徴

電子交換機は、クロスバー交換機と比較して、以下のような特徴を持っています。

プログラム制御: 蓄積プログラム制御により、新しいサービスを低コストかつ短期間で実装できるようになりました。
高速制御: 電磁回路から電子回路による制御に切り替わったことで、制御動作が大幅に高速化されました。
小型化: 集積回路の導入により、制御装置が小型化され、設置スペースを大幅に削減できました。例えば、D10形交換機は、従来のC400形クロスバー交換機と比較して、床面積が1/3以下になりました。
高い信頼性: 日本では、D10形の前身であるDEX2計画段階で、半導体に対して非常に厳しい試験が行われました。例えば、NASAが半導体に求めていた加速度基準が最大7Gだったのに対し、電電公社は数十Gを要求しました。これにより、日本の半導体メーカーの信頼性が飛躍的に向上しました。

通話路

電子交換機の通話路は、空間分割方式を採用しており、通話路スイッチを多段構成することで、多数の回線を接続しています。通話路リレーには、初期には小型クロスバースイッチが、後には多接点封止形スイッチが用いられました。加入者回線接続機能ブロック(BORSCHT)を加入者線間で共用しており、クロスバー交換機と同様に、アナログ信号で中継交換が行われました。このため、通話品質は劇的に向上したとは言えませんでした。

制御方式

中央処理: 中央処理装置は、コンピュータそのものであり、蓄積プログラム制御されています。ソフトウェアを書き換えることで、機能の追加や改訂が容易に行えます。
入出力: 加入者線間で共用されるトランクと呼ばれるアナログ回路で、呼び出し音や話中音などの音声信号を生成し、通話路の監視や信号処理を共通制御します。
共通線信号線: 共通線信号No.6に対応しており、これにより移動体通信や柔軟な課金が可能になりました。

ソフトウェア開発

電子交換機のソフトウェア開発には、状態遷移図と仕様記述言語が用いられました。これにより、複雑な交換処理を正確かつ効率的に実装することができました。

日本での交換機形式

日本国内では、規模に応じて以下の交換機が使用されました。

D10形: 大規模局用
D10-R1形: 遠隔制御用
D20形: 中規模局用
D30形: 小規模局用

開発者

電子交換機の開発には、エイモス・エドワード・ジョエル氏が大きく貢献しました。

まとめ

電子交換機は、その後のデジタル[[交換機]]への道を拓いた、通信技術の重要な進歩です。プログラム制御、高速化、小型化、そして高い信頼性により、様々な通信サービスを支えました。

参考資料

電子情報通信学会知識ベース: 2章 電話交換システム
日立評論1979年10月号 D10形自動交換機用高速中央処理系装
日立評論1979年10月号 D10形自動交換機の新通話路系装置
沖電気工業 社史
NTT技術資料館 ノードの技術（交換、ソフトウェア）

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