震海

震海（しんかい）について

震海は、大日本帝国海軍によって開発された特殊潜航艇であり、独自の戦術をもって敵艦に奇襲をかけることを目的としていました。その設計と開発には、日本の海洋戦術の革新が求められました。

開発の背景

1944年、軍令部第二部の黒島亀人部長の指導のもと、小型潜水艇「マル九金物」が試作されました。この艇は、潜水艦に搭載され、敵の軍港や艦船に接近して敵艦に爆雷を設置し、奇襲を行う設計思想を持っていました。試作艇は呉の倉橋島大浦崎P基地で審査を受けたものの、性能については大きな問題が報告されました。艇は小型かつ低速で、操舵性能が劣悪であったため、敵艦の直下で安定した姿勢を維持することが難しいと予測されていました。この試乗には第六艦隊の鳥巣健之助大佐も参加しており、彼はその性能に満足せず、試作段階で不採用となりました。この結果、東京から視察に訪れていた黒島は激怒し、関係者に対して厳しい言葉を投げかけたと言われています。

設計の詳細

震海の艦体は楕円形で、単座の潜水艇です。中央部にはハッチと潜望鏡が装備されており、浅海を航行する能力を持つように設計されています。浮力タンクには圧搾空気を送り込み、喫水を浅くできる仕組みが工夫されています。このような設計は、浅い水域でも運用可能にするためのものでした。

兵装は艦首に時限式の機雷を装備し、停泊中の敵艦に対して吸盤または磁力で付着させて設置します。この機雷には魚雷二本分に相当する1.2トンの爆薬が詰められ、時限式で爆発するため、攻撃効果が期待されました。また、水中で敵艦を探知するために、磁気探知装置も装備されており、敵艦を的確に捕捉する設計となっています。

同時期の他の潜水艇との比較

震海と同様の戦術を採用する潜水艇として、イギリス海軍のX艇が挙げられます。このX艇も震海の開発と同じ時期に実用化されましたが、震海よりも速度は劣るものの、排水量は数倍あり、改良型のXE艇ではその戦果も上げています。特に旧日本軍の重巡洋艦「高雄」に損害を与えた点では、イギリスの技術力の高さを示しています。

主要諸元

震海の計画値は以下の通りです。

• - 全長: 12.5m
• - 全幅: 1.2m
• - 水中排水量: 11.5t
• - 水中速度: 9ノット
• - 兵装: 時限式機雷（炸薬1,200kg）

このように、震海は新たな戦術ヒントを提供しようとした艇であったものの、その性能においては様々な課題があったことが視察からも明らかになりました。

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