霧にむせぶ夜 (曲)

霧にむせぶ夜

楽曲概要と成功

「霧にむせぶ夜」（きりにむせぶよる）は、昭和を代表するムード歌謡歌手、黒木憲が1968年に発表した2枚目のシングルとして知られる楽曲です。

この曲は、1968年4月1日に世に送り出されると、次第に人気を高め、発売からおよそ5ヶ月を経た頃には、日本の主要な音楽チャートであるオリコンの週間ランキングで初めてトップ10入りを果たす快挙を成し遂げました。その人気は衰えることなく拡大し、最終的には累計130万枚という驚異的なセールスを記録。これは黒木憲のキャリアにおいて、文句なしに最大のヒット作となりました。この成功により、黒木憲はその存在感を強く印象づけ、一躍スターダムに駆け上がりました。

シングル収録曲

このシングルには、表題曲である「霧にむせぶ夜」と、カップリング曲「別れても」が収められています。

両楽曲の作曲は、数々のヒット曲を手がけた鈴木淳が担当しています。

霧にむせぶ夜
作詞：丹古晴己
作曲：鈴木淳
編曲：湯野カオル
演奏時間：3分35秒

物悲しくも情熱的な歌詞とメロディー、そしてムーディーな編曲が、多くのリスナーの心を捉えました。

別れても
作詞：有馬三恵子
作曲：鈴木淳
編曲：安形和巳
演奏時間：3分40秒

表題曲とは異なる雰囲気ながらも、別れの情景をしっとりと歌い上げた楽曲です。

映画化

楽曲の爆発的なヒットを受け、同年の1968年12月には、同名の映画『霧にむせぶ夜』が松竹によって製作・公開されました。この映画は、楽曲の世界観を映像化したもので、監督は梅津明治郎、主演は栗塚旭が務めました。

特筆すべきは、歌手である黒木憲自身も映画に出演し、本人役を演じたことです。これは、楽曲が単なるヒットソングにとどまらず、社会現象とも言える広がりを見せたことを示しています。映画化は、楽曲の人気をさらに不動のものとすると同時に、黒木憲のメディア露出を増やし、その人気を確固たるものとしました。

カバーされた名曲

「霧にむせぶ夜」は、その人気の高さから、時代を超えて多くの歌手によってカバーされ、歌い継がれています。著名な例としては、歌謡界の大御所である舟木一夫、石原裕次郎、そして演歌界のレジェンドである三橋美智也や八代亜紀らがこの名曲を自身の声で蘇らせています。

具体的な収録例としては、以下のものがあります。

霧にむせぶ夜のカバー
園まり：1969年発売のアルバム『園まり/恋のささやき』に収録。
三上寛：1973年発売のアルバム『船頭小唄/三上寛えん歌の世界』に収録。
八代亜紀：1975年発売のアルバム『愛・十二章/おんなの夢』に収録。
小林ひさし：1998年にシングルとしてリリース。
瀬口侑希：2017年発売のシングル『雪舞い岬』に収録。

これらのカバーバージョンは、オリジナルとはまた異なるアプローチで楽曲の魅力を引き出し、新たなファン層にも届けられています。

また、カップリング曲の「別れても」もカバーされており、特に黒木憲の実子である黒木憲ジュニア（後に黒木憲太郎と改名）が2008年の改名後第一弾シングルとしてこの曲をカバーしたことは特筆されます。これは、文字通り親から子へと歌が受け継がれた感動的なエピソードとして語られています。

このように、「霧にむせぶ夜」は、黒木憲の代表曲としてだけでなく、昭和歌謡を彩る一曲として、その後の音楽シーンや映画といったメディアにも影響を与え、長く愛され続けている楽曲と言えるでしょう。その普遍的な魅力は、これからも多くの人々に歌い継がれていくことでしょう。

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