霧ヶ峰有料道路

霧ヶ峰有料道路

霧ヶ峰有料道路は、長野県の白樺湖から車山高原、霧ヶ峰高原、美ヶ原一帯へと続く観光道路であり、国道142号のバイパスとしての役割も担っていました。長野県企業局によって建設され、蓼科有料道路と共にビーナスラインを構成していました。現在は無料で通行できます。

概要

この道路は、以下の3つの路線から構成されています。

霧ヶ峰線: 茅野市北山を起点とし、全長11.7km、幅員5.5m。
八島線: 霧ヶ峰線から分岐し、全長9.5km、幅員6.0m。
美ヶ原線: 上田市武石上本入美ヶ原高原を終点とし、全長18.7km、幅員6.0m。

これらの路線は、道路整備特別措置法に基づき建設されました。

環境問題と建設見直し

霧ヶ峰有料道路の建設は、環境問題との間で大きな議論を呼びました。特に、八ヶ岳中信高原国定公園の指定地域を通るため、希少植物が自生する八島湿原の保護が重要な課題となりました。

当初の計画では、湿原を通過するルートが予定されていましたが、地元自治体からの陳情により、湿原を迂回するルートに変更されました。しかし、霧ヶ峰線・八島線の開通後、観光客や車の増加、建設工事による環境破壊、投棄ごみの問題が深刻化し、美ヶ原線の建設に反対する運動が起こりました。

この状況を受け、当時の大石武一環境庁長官が現地を視察し、「美ヶ原高原一帯は人工林や牧草地であり、車道計画を中止する必要はない。ただし、一部地域にある天然林を保護する計画に変更すべきである」という結論に至りました。

長野県は、この結論を踏まえ、「扉峠～美ヶ原台上の一部ルート変更」と「美ヶ原台地上の美ヶ原（高原美術館）～王ヶ頭の車道計画の中止」という計画変更を行いました。その結果、美ヶ原線は、環境への配慮を加えながら開通しました。

歴史

1966年6月：長野県議会が霧ヶ峰線の建設を了承。
1966年7月：諏訪市、茅野市からルート変更の陳情が出され、車山南回りルートに変更。
1966年10月4日：長野県企業局により霧ヶ峰線の建設開始。
1967年7月25日：霧ヶ峰線一部区間が供用開始。
1968年2月：県議会が八島線の建設を了承。
1968年7月：八島線のルート変更の陳情が出され、八島湿原南回りルートへ変更。
1968年7月21日：霧ヶ峰線が全線供用開始。
1968年9月：八島線の一部建設開始。
1969年4月：八島線の建設開始。
1970年3月：県議会が美ヶ原線の建設を了承。
1970年8月20日：八島線の一部区間が供用開始。
1970年11月6日：八島線が全線供用開始。
1970年12月：美ヶ原線の一部建設開始。
1971年6月：松本・諏訪地方の自然保護運動推進者から美ヶ原線建設中止運動が起こる。
1971年10月：環境庁長官による現地視察が行われる。
1977年10月：美ヶ原線の扉峠～美ヶ原台上区間の建設開始。
1981年4月1日：美ヶ原線が全線供用開始。
2002年2月22日：霧ヶ峰線・八島線が無料開放。
2002年4月20日：美ヶ原線が無料開放。

通行料金（1990年5月当時）

かつて有料道路だった頃の料金は以下の通りでした。

大門～霧ヶ峰：軽自動車620円、普通車870円、二輪車620円、大型車1340円、特大車3090円、原付50円
霧ヶ峰～和田峠：軽自動車470円、普通車670円、二輪車470円、大型車1030円、特大車2370円、原付50円
和田峠～扉峠：軽自動車410円、普通車620円、二輪車410円、大型車930円、特大車2160円、原付50円
扉峠～落合：軽自動車260円、普通車360円、二輪車260円、大型車510円、特大車1240円、原付50円
落合～美ヶ原：軽自動車200円、普通車360円、二輪車200円、大型車520円、特大車1230円、原付50円

現在の構成路線

長野県道194号霧ヶ峰東餅屋線
長野県道460号美ヶ原公園東餅屋線

参考文献

新田次郎『霧の子孫たち』（1970年 文芸春秋）
池田錬二『長野県の教育に夜明けを』「長野県における観光開発と自然破壊」（1978年 信州白樺）

関連項目

無料開放された道路一覧

もう一度検索