青函トンネル記念館青函トンネル竜飛斜坑線

青函トンネル竜飛斜坑線

青函トンネル竜飛斜坑線は、青森県東津軽郡外ヶ浜町にある青函トンネル記念館が管理運営を行うケーブルカー路線です。記念館敷地内の地上にある「青函トンネル記念館駅」と、青函トンネル本坑へと繋がる斜坑の途中にある地下の「体験坑道駅」を結んでいます。元々は青函トンネル建設工事の際に、作業員や資材を運搬するために設けられた斜坑を転用したものです。

路線概要

この路線の全長は778メートルに及び、そのうち海面下部分は140メートルを占めます。全線が単線構造となっており、列車交換のためのすれ違い設備はありません。車両は1両編成で、定員は40名。「セイカン1」という形式名と「もぐら号」という愛称が付けられています。通常運行に使用されるこの車両に加え、記念館が休館している冬季や、トンネル内の保守作業時には、定員の少ない作業用車両が使用されることがあります。

路線の巻き上げ機は、青函トンネル記念館駅に隣接する建屋内に設置されています。駅には通常2名の係員が配置され、一人がケーブルカーの操作を担当し、もう一人が風圧防止のための通風門の開閉を行います。地下の体験坑道駅には1名の係員が待機しています。体験坑道駅付近には、作業用の線路へと分岐する地点が存在します。

運営と位置付け

青函トンネル竜飛斜坑線は、実質的には記念館の展示施設の一部であり、アトラクションのような性格も持ち合わせていますが、正式には鉄道事業法に基づく鉄道事業として運営されています。このため、運賃や運行ダイヤの設定、安全報告書の公表が義務付けられており、国土交通省の統計資料からも運営状況を確認することができます。

この斜坑は、青函トンネル内に設けられた二つの定点のうち、本州側の竜飛定点（かつての竜飛海底駅）に通じています。青函トンネル内で列車火災などの異常事態が発生した場合、原則として列車はトンネルを脱出しますが、それが困難な場合は竜飛定点または北海道側の吉岡定点（かつての吉岡海底駅）に停車します。乗客は、両定点に設けられている斜坑のケーブルカーを利用して地上へ避難することになります。北海道側の吉岡定点の斜坑にも同様のケーブルカーがありますが、こちらは一般公開されておらず、鉄道事業法に基づく事業許可も取得していません。

現在の運賃は往復1,200円（小人は半額）が基本で、片道乗車券の発売は通常行っていません。記念館の入場料とセットになった割引券も販売されています。運行時間は9時台から17時台までで、閑散期は約50分間隔、多客期は約25分間隔での運行となります。ただし、アクセス道路である国道339号が冬期間閉鎖されるため、例年11月上旬から翌年4月下旬にかけては記念館が休館となり、本路線もそれに伴って運休します。

歴史と駅

青函トンネル竜飛斜坑線は、青函トンネルが開業した翌年の1988年7月9日に営業を開始しました。これに先立ち、青函トンネル記念館も同年3月11日に開館しています。開業当初より、青函トンネル記念館駅と体験坑道駅の2駅が設けられています。

青函トンネル記念館駅は、斜坑に面した地上駅で、ホームは1面1線です。強風を防ぐための通風門が設置されており、通風門が開いている間は駅構内への立ち入りができません。駅の入口は青函トンネル記念館の建物内にあり、入館券購入後に左手に進む必要があります。2002年には、「世界一長い海底トンネルの記念館」として、東北の駅百選に選定されました。

体験坑道駅は、斜坑に面した地下駅で、こちらもホームは1面1線です。2014年3月に海峡線の二つの海底駅（竜飛海底駅・吉岡海底駅）が廃止されて以降、体験坑道駅は営業中の駅としては世界で最も海抜の低い場所にある駅となりました。

かつてJR北海道が実施していた「竜飛海底駅見学コース」では、体験坑道駅から竜飛海底駅へ徒歩で移動し、トンネル内部を見学することが可能でした。しかし、記念館側からケーブルカーを利用して体験坑道へ降りただけでは、竜飛海底駅構内への入場はできませんでした。この見学コースは2013年11月10日に終了し、竜飛海底駅自体も2014年3月14日限りで廃止されましたが、青函トンネル竜飛斜坑線の運行および体験坑道での見学は、駅廃止後も継続して行われています。

路線データ
路線距離：実距離778m（営業キロ0.8km）
軌間：914mm
駅数：2駅
最大勾配：25%（全線）

この路線は、単なる交通手段としてだけでなく、青函トンネル建設の歴史や技術を肌で感じられる貴重な体験施設としての役割も担っています。

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