青山健煕

青山健熙（あおやま けんき）は、1939年生まれの元北朝鮮工作員です。1998年に北朝鮮を脱出し、その過酷な経験を公に語りました。彼の本名は非公開で、「青山健熙」は仮名とされています。

人物

大阪府生野区で生まれた在日朝鮮人である青山氏は、1960年秋に帰国事業で北朝鮮に渡りました。しかし、到着するや否や、朝鮮総連や日本共産党の宣伝が虚偽であり、北朝鮮が「地上の楽園」ではなく「この世の地獄」であることを悟ったといいます。

北朝鮮では、当局によって一方的に咸興機械工場での労働を強いられました。不自由な生活に不満を抱く人々による抗議や暴力沙汰も頻発しましたが、参加者は当局に連行されていきました。青山氏は、出身成分は低かったものの、工場の党委員会から大学入試の推薦を受けました。元々文系を志望していたものの、帰国者には工業系の学部しか許されず、1961年9月に金策工業大学に入学。しかし、大学生活は軍隊と変わらず、常に歩哨に立つことを強いられました。生活は厳しく、日本から持ってきた本を売って生活費を稼ぐこともありました。不衛生な住環境や農村への動員も日常茶飯事でした。共に日本から来た年長の男性が「ここは地獄だ」と涙ながらに語った言葉が、北朝鮮での生活を象徴しています。

1971年、青山氏は朝鮮労働党に入党を許されます。1973年には工学准博士の学位を取得。しかし、1977年、日本からの帰国者である従兄弟が政治犯として管理所に投獄されたことに連座し、咸鏡北道会寧市に追放されました。1988年秋に平壌に召還され、1995年秋には党中央委員会工作部に配属され、工作員としての活動を強いられました。しかし、1998年5月に突然解任され、粛清の危機を感じた青山氏は、6月に家族と共に中国へ脱出しました。1999年3月には、日本大使館の協力により、単身で日本に帰国しました。

家族を中国に残したまま、日本での逃亡生活を送る中で、青山氏は2002年に『北朝鮮という悪魔』と『北朝鮮 悪魔の正体』を出版しました。これらの著書で、彼は北朝鮮の恐怖政治や劣悪な生活、ミサイル開発研究への関与、対日工作の実態を暴露しました。また、日本人拉致被害者の「日本人村」や朝鮮総連の暗部、強制収容所の存在など、北朝鮮に関する様々な情報を公開しました。さらに、拉致問題に関する北朝鮮の報告書が虚偽であることや、北朝鮮の飢饉が人災であることを指摘しました。

2003年には、脱北者支援のため「日本脱北者同志会」を設立し、脱北者の救済活動に尽力しました。同年、読売新聞が青山氏の難民認定申請が認められる見込みであると報じましたが、法務省は三重国籍であることを理由に認定を覆しました。その後、青山氏は国を相手に難民認定と損害賠償を求める訴訟を起こしました。

青山健熙の経験は、北朝鮮の実態を深く理解する上で重要な証言となっています。彼の著書は、北朝鮮の暗部を抉り出し、多くの人々に衝撃を与えました。彼の活動は、今もなお、北朝鮮の人権問題に関心を寄せる人々に影響を与え続けています。

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