青柳卓雄

青柳 卓雄: 医療工学の革新者

青柳卓雄（あおやぎたくお）は、1936年2月14日、新潟県新発田市に生を受けた。彼の父は数学と電気工学の教師であり、母は専業主婦として家庭を支えていた。青柳は4人兄弟の次男であり、幼少期から学問に対する興味を養った。1954年に新潟県立長岡高等学校を卒業後、1958年には新潟大学工学部電気工学科を修了。その後、島津製作所に入社し、医療計測機器の開発に従事する。

島津製作所では、青柳は電子工学研究室に配属され、特に半導体応用の分野で活躍した。ここでの経験は彼の医療機器開発における基礎を築くこととなり、多くの医用計測機器に関わる中で重要な知見を得た。自叙伝『パルスオキシメトリの誕生から未来へ』には、島津製作所時代の思い出や研究の過程が克明に記されている。

1971年に日本光電工業に転職した青柳は、同社で医療機器の開発に注力した。彼は日本光電の初代社長の理念に触発され、医療技術における革新を目指すことを決意。1972年には、現在の医療現場で必須とされる「パルスオキシメトリ」の原理を発見し、その後試作したパルスオキシメーターを日本で初めて実用化した。

青柳は1974年に特許を出願したが、その後社の指示でデスクワークに異動となり、約10年間をこの職務で過ごした。しかし、その後研究職に復帰し、彼の発明したパルスオキシメーターの性能改善や新たな応用分野に取り組んだ。この功績は急速に評価され、1987年にはカルフォルニア大学のJohn W. Severinghaus教授が、日本人として青柳の名を学会で発表するという栄誉に浴した。

青柳は東京大学から1993年に博士号を授与され、2000年には科学技術庁長官賞を受賞。さらに、2002年には紫綬褒章を受章するなど、業界内外から多くの評価を受けた。彼は2013年にはノーベル医学生理学賞の候補にも推薦された。

青柳は2020年4月18日に84歳で逝去。彼の死去は国内外で広く報じられ、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポスト、ウォール・ストリート・ジャーナルなどの有力紙が追悼記事を掲載した。また、日本光電は2020年に青柳の業績を称え「第4回日本医療研究開発大賞／内閣総理大臣賞」を受賞。2021年には、米国麻酔科学会から栄誉賞「Honorary Member Award」を頂き、彼の功績を讃える論文が『Journal of Anesthesia』に掲載された。

青柳卓雄の業績は、今もなお医療界において大きな影響を与え続けており、彼の発明したパルスオキシメーターは、現代医療に欠かせない検査機器の一つとして広く使用されている。

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