アイロン

アイロン：歴史、種類、機能、そしてアイロンがけ

アイロンは、熱と圧力を利用して衣類のしわを伸ばす道具です。古くから人々の生活に深く関わってきたアイロンは、その歴史の中で様々な進化を遂げ、現代では電気式アイロンが主流となっています。この記事では、アイロンの歴史から種類、機能、使用方法、関連用品まで、詳しく解説します。

1. アイロンの歴史

アイロンの起源は古く、中国では金属の熱と重みを利用して布を伸ばす技術がありました。日本では平安時代の『倭名類聚抄』に火熨斗（ひのし）が登場し、貴族階級を中心に使用されていました。火熨斗は、炭火で熱した金属容器で布を伸ばすもので、寝具を温める用途にも用いられていました。庶民は、麻の衣類を洗った後は、砧で叩いてしわを取っていました。

その後、炭火で加熱するこて型のアイロンが登場し、明治時代には炭火アイロンが普及しました。第二次世界大戦中には金属の供出により、陶製の炭火アイロンが開発されるなど、時代とともにアイロンの形態も変化しています。

西洋では、炭火アイロンの火力の調整が難しく、布を焦がす問題や火の粉が飛び散る問題があったため、こて型のアイロンが広く使われました。これは、石、鉄、銅などで作られ、専用のストーブで加熱するものでした。現代でも、和裁やパッチワークなど、細かい作業にはこて型アイロンが用いられています。

20世紀初頭には、電気式アイロンが発明され、現代では主流となっています。電気式アイロンは、電熱線で発生した熱で布を温め、しわを伸ばします。

2. アイロンの種類

2.1 炭火アイロン

本体内部に炭火を入れ、その熱でしわを伸ばします。蓋があり、煙突と握り手があります。幕末頃に日本に輸入され、明治時代以降普及しました。

2.2 こて型アイロン

こて状の金属を熱してしわを伸ばすアイロンです。昔は炭火、現在は電気で加熱するものが一般的です。和裁やパッチワークなどに用いられます。

2.3 電気式アイロン

電熱線で発生した熱でしわを伸ばします。温度調節機能やスチーム機能を備えたものが多く、家庭で最も普及しているタイプです。コードレスタイプや折りたたみ式など、様々な形態があります。

3. 電気式アイロンの機能

3.1 温度調節

衣類の素材に合わせた温度設定が可能です。高温（綿・麻）、中温（毛・絹・化学繊維）、低温（アクリル・ポリウレタン）など、素材別に適切な温度が設定されています。

3.2 スチーム機能

高温のスチームを噴出することで、しわをより効果的に伸ばすことができます。スチーム機能がないものはドライアイロンと呼ばれます。

4. アイロンがけ

アイロンがけは、水分、圧力、温度を利用して繊維を変形させる技術です。しわ伸ばしだけでなく、生地に丸みをつける、折り目をつけるなど、様々な用途があります。あて布を使用することで、生地へのダメージを軽減し、温度と圧力の調整が可能です。

近年では、形態安定加工が施された、アイロンがけが不要な衣類も増えています。また、ワッペンを接着する際にもアイロンがけが用いられます。

5. 関連用品

アイロンがけを効率的に行うための様々な用品があります。アイロン台、アイロンマット、仕上げ馬、袖馬、衿まんじゅう、霧吹き、あて布、ピンボードなど、用途に合わせたアイテムを選びましょう。

6. 絵表示

衣類のアイロンがけに関する表示は、国際標準化機構（ISO）の「ケアラベル・取扱い絵表示」が用いられています。アイロンの温度やスチームの可否が、絵記号と点の数で表示されます。

7. まとめ

アイロンは、その歴史の中で様々な進化を遂げ、現代では便利な電気式アイロンが主流となっています。適切なアイロンと関連用品を使い、素材に合わせた温度設定やアイロンがけの方法を知ることで、より美しく、効率的な衣類のケアを行うことができます。

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