青瓦台:韓国の歴史と変遷を語る建造物
韓国
ソウル特別市鐘路区北岳山麓に位置する青
瓦台(チョンワデ)は、2022年5月まで韓国大統領府として機能していた歴史的建造物です。青い
瓦屋根が特徴的なこの建物は、韓国の政治の中枢として、そして国民にとって特別な存在として長年にわたり認識されてきました。現在は、一般市民に開放された市民公園として、新たな役割を担っています。
青瓦台の名称と歴史
青
瓦台の名称は、その青い
瓦屋根に由来しています。かつては、
国防上の理由から、一般の
地図には掲載されておらず、航空写真でもぼかし処理が施されるなど、その姿は容易に知ることができませんでした。
青
瓦台のある地域は、
高麗時代から王族の居住地として知られ、李朝の創始者である
李成桂が
景福宮を建設した場所でもあります。
大韓民国成立後の
1948年、初代大統領
李承晩は、日本統治時代に建設された旧朝鮮総督官邸を大統領府として使用し始めました。当初は「景武台」と呼ばれていましたが、
1960年12月、第4代大統領
尹潽善によって「青
瓦台」と改称されました。
1968年1月には、北朝鮮
特殊部隊による青
瓦台襲撃未遂事件が発生し、この事件を契機に、青
瓦台周辺の警備体制は一層強化されました。周辺道路は一般通行が禁止され、厳重な警備が敷かれるようになりました。
1991年には
盧泰愚政権下で、新たな大統領官邸が建設され、旧官邸は解体されました。その後、
金泳三政権下では、昼間のみ一般通行が許可されるようになり、
文在寅政権下では24時間一般通行が可能となり、
検問所も撤去されるなど、一般市民への開放が進みました。
大統領府の移転と青瓦台の新たな役割
2022年3月に行われた大統領選挙で当選した
尹錫悦大統領は、大統領府を龍山区の
国防部庁舎に移転することを決定しました。尹大統領は、青
瓦台を「帝王的権力の象徴」と捉え、国民との距離を縮めるため、この移転を公約として掲げていました。
移転の理由は、青
瓦台の広さや権威的な外観が国民との距離感を生んでいるという指摘や、実務に適していないとの意見があったためです。
文在寅政権下でも移転が検討されていましたが、
尹錫悦政権下で実現しました。
2022年5月10日、大統領府が龍山区へ移転したことに伴い、青
瓦台は国民に開放されました。一般公開初日には約26,000人が訪れ、その後も多くの観光客が訪れています。本館や大統領公邸の内部も一般公開され、韓国の歴史と文化を肌で感じる事ができます。現在、韓国国籍および在住外国人は、事前予約の上見学が可能です。
青瓦台の建物と施設
青
瓦台には、大統領執務室や会議室、
食堂などを備えた本館をはじめ、国賓を招いて晩餐会などが行われる迎賓館、大統領を支えるスタッフの執務室である秘書室、
首脳会談などが行われる常春斎、庭園である緑地苑、大統領一家の公舎である大統領公邸、
記者会見場があった春秋館など、様々な建物や施設があります。
衛星写真と情報公開
かつては、
国防上の理由から、青
瓦台の衛星写真は公開されていませんでしたが、大統領府の移転に伴い、
Google Earthや
Googleマップなどでも青
瓦台の全貌が確認できるようになりました。韓国の法律では、
人工衛星で撮影された主要保安施設や
軍事基地の写真の公開は禁止されていましたが、この制限も解除されました。
青瓦台の未来
歴史的建造物であり、かつて韓国の政治の中枢として機能していた青
瓦台は、市民公園として新たな役割を担い、国民に開放されています。韓国の歴史と文化を象徴する場所として、これからも多くの人々に愛され続けることでしょう。