鞍山級駆逐艦

鞍山級駆逐艦：中国海軍黎明期の象徴

鞍山級駆逐艦、または6607型駆逐艦は、中華人民共和国がソビエト連邦から購入した駆逐艦です。これらは中国人民解放軍海軍にとって最初の駆逐艦であり、その歴史において重要な役割を果たしました。艦級名は一番艦の「鞍山」に由来し、NATOコードネームも「Anshan class」として知られています。

導入の背景

1930年代にイタリアの設計を基に開発されたソ連の7号計画型駆逐艦（グネフヌイ級）は、1950年代に中国へ4隻が供給されました。当時の中国海軍は、第二次国共内戦で敗退した国民党軍が保持していた駆逐艦や護衛駆逐艦、巡洋艦などに大きく劣る戦力しかなく、朝鮮戦争の勃発によりアメリカ海軍の艦隊も周辺海域で活動を開始したため、早急な戦力増強が求められていました。

当初、中国海軍はイギリスから旧式艦を購入しようとしていましたが、朝鮮戦争による制裁措置のため実現せず、代わりにソ連から7号計画型駆逐艦を購入しました。この取引は、17トンもの金という莫大な対価を伴うものでした。

艦艇の概要

中国に輸出された4隻の7号計画型駆逐艦は、元々1936年にソ連で起工され、第二次世界大戦では赤色海軍太平洋艦隊に所属していました。ソ連海軍ではより新型の駆逐艦が導入されたことで、これらの旧式艦が中国への供与に回されたのです。1954年と1955年にそれぞれ2隻ずつが中国に引き渡され、中国側で若干の修正が加えられた後、鞍山級と呼ばれるようになりました。

旧式ながらも、当時の中国海軍にとっては貴重な戦力であり、4隻合わせて「四大金剛」と呼ばれました。これらの駆逐艦は、国民党軍の駆逐艦や護衛駆逐艦に対抗できる能力を備えており、中国海軍の戦力増強に大きく貢献しました。国民党軍もアメリカからベンソン級駆逐艦などを導入し、戦力強化を図っています。

運用と近代化

4隻の鞍山級駆逐艦は、青島に拠点を置く北海艦隊に配備され、北京を含む中国東北部沿岸の防衛という重要な役割を担いました。1970年代には、近代化改修が実施され、電子装備や武装が大幅に変更されました。特に、魚雷発射管が撤去され、P-15（SY-1）艦対艦ミサイル発射機が設置されたことは、当時の艦艇の近代化における大きな転換点でした。

1970年代に旅大型駆逐艦が就役するまで、鞍山級は中国人民解放軍海軍における最大の戦闘艦艇として運用されました。しかし、老朽化のため1989年から1992年にかけて全艦が退役しました。

現在の状況

退役した4隻のうち、「撫順」は解体されましたが、「太原」は大連市の老虎灘海洋公園で展示されており、一部はユースホステルとしても利用されています。「鞍山」は青島海軍博物館に、「長春」は乳山市においてそれぞれ記念艦として係留され、一般公開されています。

まとめ

鞍山級駆逐艦は、中国人民解放軍海軍が初めて運用した駆逐艦であり、その後の海軍発展の礎となりました。旧式艦ながらも、中国海軍にとってかけがえのない存在であり、その歴史的な意義は今もなお語り継がれています。

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