鞍馬寺鞍馬山鋼索鉄道

鞍馬山鋼索鉄道（くらまやまこうさくてつどう）

鞍馬山鋼索鉄道は、京都府京都市左京区にある真言宗の寺院、鞍馬寺が運営するケーブルカー路線です。正式名称は鞍馬山鋼索鉄道ですが、「鞍馬山ケーブル」という通称で親しまれています。日本の鉄道事業法に基づき営業を行う鉄道としては非常に珍しく、宗教法人が運行主体となる唯一の事例です。

この路線の目的は、鞍馬寺への参拝者が急峻な参道をより楽に移動できるよう、交通手段を提供することにあります。

路線概要

鞍馬山鋼索鉄道は、起点である山門駅と終点である多宝塔駅を結ぶ単線構造です。営業キロは191m（0.2km）と、鉄道事業法に基づく鉄道路線としては日本で最も短い距離となっています。線路は1本のみで、途中に車両が行き違うための設備はなく、1両の車両が駅間を往復するシンプルな運行形態を採用しています。

路線距離（営業キロ）: 191m (0.2km)
軌間: 800mm
駅数: 2駅（山門駅、多宝塔駅）
高低差: 89m
最急勾配: 499‰（約26°31′）

職員の多くが寺院の作務衣を着用しているのも特徴の一つです。

運行形態

通常の運行間隔は15分または20分に一本で、片道約2分で山門駅と多宝塔駅を結びます。参拝者が多い多客期には、待ち時間を短縮するために高頻度のピストン運転が行われます。

始発は山門駅を8時40分に出発し、多宝塔駅からの始発はその5分後です（多客時を除く）。最終便は山門駅発が16時30分ですが、夏季にあたる6月から8月までの期間は17時00分まで延長されます。

車両

使用されている車両は、鞍馬寺で修行した幼少期の源義経にちなんで「牛若號」という愛称が付けられています。

開業当初の1957年に導入された初代車両は、軌間762mmの鉄車輪を使用し、2両の車両が互いに昇降する交走式でした。1976年に登場した2代目からはゴムタイヤ式が採用されましたが、電力は架線から供給されていました。1996年に運行を開始した3代目車両「牛若號III」では架線が廃止され、モノレールや新交通システムのように軌道脇からの集電方式に変更されました（この集電は動力用ではなく、車内照明やワイパーなどの補助電源に使用）。

そして、2016年5月20日から運行されている4代目車両「牛若號IV」では、車内で使用する電源を駅で充電する方式が採用されています。

事実上の運賃と寺院の考え

鞍馬山鋼索鉄道は、鉄道事業法上の扱いは「運賃無料」となっています。これは、かつて箕面鋼索鉄道も採用していた形態ですが、現在は鞍馬山鋼索鉄道が唯一の事例です。しかし、乗車するためには鞍馬寺の諸堂維持への寄付金として、大人一口200円（小学生は一口100円）を納める必要があります。この寄付金を納めた方への「お礼」としてケーブルカー乗車が提供されるという形をとっており、実質的にこの寄付金が乗車料金の代わりとなっています。

この仕組みは、鉄道の「運賃」として収入を得ると宗教法人法上の営利事業と見なされ課税対象となるのに対し、寺院への「寄付金」は宗教活動の一環と見なされて非課税扱いとなるためです。

ただし、身体障害者手帳を持つ方と、その付き添い1名については、手帳の等級に関わらず寄付金なしで乗車が認められています。

鞍馬寺は、このケーブルカーが「足の不自由な方や高齢の方の参拝の負担を軽減するために設置されたものであり、営利目的ではない」と説明しています。そのため、運賃ではなく、寺院維持への協力をいただいた方への感謝として利用を提供しているとしています。

かつては、寄付をした際に「参拝記念の花びら」と呼ばれる蓮華の形をした紙製の乗車票が手渡されていましたが、2015年の改修後は自動券売機で発行される感熱紙の「寄進票」に変更されました。また、以前は記念に持ち帰れる「花びら」も別途用意されていましたが、現在は配布を終了しています。

なお、鞍馬寺は、歩行に困難がない参拝者に対しては、ケーブルカーではなく参道を歩くことを推奨しています。これは、自然の中を歩くことで鞍馬寺の本尊である「尊天」、すなわち自然の力をより強く感じられるためであり、また参道途中には由岐神社や魔王の滝などの見どころが多く、源義経や清少納言も歩いた歴史的な道であるためです。

歴史

1957年（昭和32年）1月1日 - 山門駅～多宝塔駅間が開業。
1976年（昭和51年）1月 - 2代目車両が運行を開始。
1996年（平成8年）8月8日 - 3代目車両が運行を開始。
2015年（平成27年）5月11日 - 改修工事のため運休。
2016年（平成28年）5月20日 - 4代目車両による運行を再開。

駅

山門駅: 1992年に完成した普明殿が駅舎を兼ねています。
多宝塔駅: ケーブルカー開業時に建てられた多宝塔礼堂が駅舎を兼ねています。

接続路線

山門駅からは、叡山電鉄鞍馬線の終点である鞍馬駅まで徒歩約5分でアクセスできます。

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