岳飛

岳飛の生涯と業績

岳飛（がく ひ、Yoè Fēi）は中国南宋の重要な武将で、1053年、相州湯陰県で生まれました。幼少期に父を亡くし、生母の姚氏に育てられました。彼の武勇は早くから知られ、21歳で義勇軍に参加し、北宋末期の開封防衛戦に携わりました。この時、彼は金との戦闘において数々の軍功を挙げ、やがてその名声は広がります。紹興4年（1134年）には清遠軍の節度使に任命され、ますますその地位を高めていきました。

しかし、岳飛の急成長に気をよくしない宰相秦檜が彼の存在を脅威とみなし、彼を排除しようと画策しました。岳飛は金との戦いで多くの勝利を収めていましたが、その名声が彼を逆境に引き込む原因となったのです。紹興10年（1140年）には北伐を起こし、朱仙鎮で金軍との大規模な戦闘を行いました。この戦において岳飛は金の総帥、斡啜の軍を破るものの、すぐに秦檜によって撤退命令を受け、孤立を余儀なくされました。この事件は『宋史』には記録されていますが、金史には残されていないという不思議な状況です。

その後、秦檜は金との和議を進め、相対する岳飛の存在を危険視しました。紹興11年（1142年）12月、岳飛、彼の子奉岳雲、そして岳飛の軍の最高幹部である張憲は冤罪を被り殺されました。表向きは謀反の罪での処刑でしたが、実際は秦檜の策謀によるものでした。岳飛は39歳、岳雲は23歳という若さで命を奪われ、兵士たちには「最忠」の証しとして彫られた「尽忠報国」の入れ墨がありました。

岳飛没後の紹興32年（1162年）、皇帝孝宗の即位に伴い、彼の冤罪は晴らされます。彼の名誉は回復され、官職も再任されました。さらに淳熙5年（1178年）には「武穆」と称され、嘉泰4年（1204年）には鄂王に追封されました。岳飛を祀るために杭州の西湖のほとりに岳王廟が建立され、彼の墓には彼の冤罪を生んだ秦檜夫妻や張俊を連座させた像が置かれています。今でも彼は救国の英雄として崇められ、現代中国の英雄の代表として名が挙げられることが多いです。

岳飛の家族には、妻が劉氏や李娃があり、子どもには岳雲、岳雷、岳霖などがいました。彼の子孫は時代を経て様々な活動を行い、近代では楽以琴のような偉人も輩出しています。

岳飛を題材にした作品には、古呉墨浪子編の『岳墳忠蹟』や、清代の小説『説岳全伝』、近年のテレビドラマ『岳飛伝 THE LAST HERO』などがあります。彼の生き様とその活躍は多くの作品に影響を与え、中国における歴史的な英霊として永遠に語り継がれることでしょう。

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