韓国による天皇謝罪要求

韓国による天皇謝罪要求事件とは

2012年8月、当時の韓国大統領であった李明博（イ・ミョンバク）が、天皇（当時の明仁天皇）に対して過去の歴史に関する謝罪を要求した一連の出来事です。この要求は、李明博大統領による竹島（韓国名：独島）上陸という挑発的な行動と並行して行われ、日韓関係は著しく悪化しました。

事件の背景

李明博大統領は、大統領就任以前から日本に対し「謝罪や反省は求めない」という立場を表明していました。しかし、大統領就任後には、天皇との会見時に韓国訪問を招請するなど、友好的な姿勢も示していました。ところが、2012年に入ると、慰安婦問題や竹島問題などをめぐり、日本への批判的な態度を強めていきます。

特に、2011年には、韓国のウォン急落への懸念から、日本との間で通貨交換協定を大幅に拡大しましたが、その後、慰安婦問題の解決を強く求めるなど、二国間関係は複雑化していました。そして、2012年7月には、駐日大使を通じて慰安婦問題に関する日本の姿勢を打診しましたが、日本の歴史認識に変化がないとの報告を受けました。

事件の概要

2012年8月10日、李明博大統領は竹島に上陸し、韓国領であることを改めて主張しました。同日、ロンドンオリンピックのサッカー日韓戦で勝利した韓国選手が「独島は韓国の領土」と書かれたプラカードを掲げたことも、日本国内で反韓感情を高める要因となりました。

8月14日、李明博大統領は、天皇に対し、「韓国に来たければ、独立運動家に謝罪すべきだ」と発言しました。この発言は、天皇が過去の植民地支配について「痛惜の念」を表明したことに対するものでしたが、李明博大統領は「痛惜の念」という言葉だけでは不十分であり、独立運動家に対して跪いて謝罪すべきだと主張しました。この発言は、日本国内で大きな反発を呼び、日韓関係は著しく悪化しました。

韓国国内の反応

韓国国内では、李明博大統領の発言を支持する意見が多く見られました。保守系新聞の朝鮮日報は、「日王の父ヒロヒトは植民地支配時に韓国を迫害した人物であり、アキヒトも同様に謝罪すべきだ」と主張しました。また、光復会などの団体も、天皇が独立有功者や慰安婦被害者に謝罪すべきだと主張しました。

日本の対応

日本政府は、李明博大統領の発言に対して強く反発し、謝罪と撤回を求めました。また、駐韓大使を一時帰国させるなどの措置を取りました。国会でも、李明博大統領の発言を非難する決議が採択されました。

批判と影響

この事件は、日韓両国で大きな議論を呼びました。日本では、李明博大統領の発言は「外交的に非常識」という批判が強まりました。一方、韓国国内では、李明博大統領の発言を支持する意見も多く見られました。しかし、この事件をきっかけに、日本国内での嫌韓感情が高まり、日韓間の交流事業の中止や日本人観光客の減少につながりました。また、世論調査では、韓国を「軍事的に危険な国」と認識する日本人の割合が増加しました。

外交的配慮

2012年10月、麻生太郎元首相が韓国を訪問し、李明博大統領と会談しました。麻生元首相は、李明博大統領が天皇に対して謝罪を求めた事実はないと述べた一方、李明博大統領は自身の発言が誇張されている部分があると述べています。

その後の影響

この事件は、日韓関係に深刻な影響を与えました。両国間の交流は停滞し、国民感情も悪化しました。この事件以降も、歴史認識問題や領土問題をめぐり、両国間の緊張関係が続いています。

参考文献

坂本義和「歴史的責任への意識が問われている　自省にもとづく紛争解決」『世界』第836号、岩波書店、2012年11月、37-41頁。
西村幸祐「韓国一流紙までが反日原理主義」『WiLL』第96号、ワック、2012年12月、80-91頁。

関連情報

* 知恵蔵2013『李明博』 - コトバンク

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