韓国鉄道9900系電車

9900系電車

概要

9900系電車は、かつて大韓民国鉄道庁（現在の韓国鉄道公社）が所有していた電車で、特に優等列車向けに開発されたことから「優等型電気動車」とも称されました。1980年に登場し、中央線、太白線、嶺東線といった電化区間の主要路線で特急列車として運用されましたが、設備の陳腐化などにより1999年には等級が下げられ、最終的には2001年にすべての車両が運用を終え廃車されました。

開発経緯

本系列の開発は、中央線、太白線、嶺東線の電化完成に合わせて計画されました。当時の韓国鉄道庁職員が日本の国有鉄道を視察した際、485系特急電車の活躍に感銘を受け、同様の特急列車を韓国でも運行したいと考えたことが契機となりました。このため、車両開発にあたっては日本の日立製作所が技術面で全面的に協力しています。電気機器は日立製作所で製造され、車体は大宇重工業で製造・組み立てが行われ、日韓協力によって誕生した車両でした。

車両構成

9900系電車は、10両固定編成が2本、合計20両が製造されました。交流電化方式の25kV、60Hzに対応していました。編成は清涼里駅方面が1号車、東海駅方面が10号車となるよう組成されていました。

各車両の形式と役割は以下の通りです。

9900型（1号車、10号車）：付随先頭車（Tc）で、一般席車両でした。
9920型（2号車、4号車、9号車）：中間電動車（M）で、屋上に抵抗器を備えていました。一般席車両です。
9950型（3号車、5号車、8号車）：中間電動車（M'）で、パンタグラフを備えていました。一般席車両です。
9980型（7号車）：付随車（Ts）で、特別室（特室）車両でした。日本のグリーン車に相当する位置づけです。
* 9990型（6号車）：付随車（Tb）で、食堂車でした。

外観と内装

車体外観は、当時のセマウル号形客車と共通のデザインテイストを持っており、特に先頭部の形状は日本の国鉄特急電車にも類似した流線型でした。

塗装は運用期間中に何度か変更されています。

1. 運用開始当初：クリーム色の車体に赤色の帯を巻いたデザインでした。
2. 初期塗色：比較的早い時期に、水色の地に朱色の帯を巻いた塗装に変更されました。
3. その後：白色の車体に黄色と橙色の帯が配されたデザインとなりました。
4. トンイル号格下げ時：白地に黄色と緑色の帯を巻いた、当時のトンイル号標準色に変更されました。

内装面では、特別室は当時のセマウル号と同じ簡易リクライニングシートを備えていましたが、一般席車両の座席はムグンファ号形客車と同様のものでした。後にこれらの客車が等級を下げる形で運用されるようになると、9900系の一般席車内は他の優等列車に比べてやや見劣りする状態となりました。

食堂車は、KTX開業以前の韓国の長距離列車では一般的でしたが、ムグンファ号などの多くが軽食主体のビュッフェタイプであったのに対し、本系列の食堂車は本格的な食事を提供するスタイルでした。

運行と終焉

特急列車として運用されていた時期は、主にソウル特別市の清涼里駅と日本海側の東海駅の間を結ぶ中央線・太白線・嶺東線ルートで1日1往復運行されていました。約5時間40分かけて両駅間を結んでいましたが、最高速度は110km/hであったものの、中央線の線形上の制約から実際の走行速度が100km/hを超えることは稀であったとされています。

車両の老朽化と設備の陳腐化が進んだため、内装のリニューアルによるグレードアップ計画も検討されましたが、車体の状態が著しく悪かったことから断念されました。そして、1999年6月のダイヤ改正をもって、本系列は優等列車としての運用を終え、トンイル号（当時の急行列車に相当）に格下げされました。

トンイル号に格下げされた際、座席は全車自由席となり、それまで特別室だった車両も一般席として開放されました。食堂車は営業を終了し閉鎖されましたが、編成からは外されず、そのまま座席車として運転されました。しかし、格下げ後も運用は長く続かず、2001年2月28日の運行を最後にすべての車両が営業運転を終了し、そのまま廃車されました。

保存

全車が廃車された9900系電車ですが、先頭車のうち9904号が保存されています。2001年8月から韓国鉄道博物館に展示されており、当初は廃車時の塗装でしたが、後に登場当初のクリーム色に赤帯の塗装に復元され、現在に至ります。

その他

本系列とほぼ同じ外観を持つディーゼルカーであるDEC（Diesel Excellent Car, 9201系）も同時期に開発・運用されましたが、こちらも全車が廃車されており、保存車はありません。
本系列が活躍した嶺東線は、2005年に全区間の電化が完成し、東海駅での機関車交換が不要になるなど輸送効率が向上しました。韓国鉄道公社は、このルートでの更なる時間短縮を目指し、本系列の後継となる振り子式電車の開発も試作車両（TTX）によって進められました。

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