韓崎 (潜水母艦)

韓崎（からさき）：日本海軍初の潜水母艦

韓崎は、日本海軍が初めて保有した潜水母艦です。その起源は、日露戦争時に拿捕されたロシア帝国の義勇艦隊所属船「エカテリノスラフ」に遡ります。艦名は対馬の北端に位置する地名に由来します。

誕生の経緯

元々「エカテリノスラフ」は、ドニエプル川沿いの都市（現在のドニプロペトロウシク）にちなんで名付けられたロシアの商船でした。オデッサからウラジオストクへ向かう途上、日露間の国交断絶により日本海軍に拿捕されました。拿捕場所が対馬の北方、釜山沖であったことから、対馬北端の地名が新たな艦名として採用されました。

「エカテリノスラフ」はイギリスで建造された比較的新しい船であり、遠洋航海にも耐えうる性能を持っていました。また、艦内に多数の人員を収容できるスペースがあったことから、潜水母艦としての活用が検討されました。

日本海軍での活躍

拿捕の翌年、1905年（明治38年）に横須賀工廠で潜水母艦への改装工事が行われ、日本海軍初の潜水母艦として生まれ変わりました。当初は水雷母艦として類別されましたが、実質的には一貫して潜水母艦としての任務に従事しました。その後、二等海防艦、再び水雷母艦と類別が変更されましたが、1924年（大正13年）に正式に潜水母艦として類別されました。

1924年以降は老朽化が進み、呉港に係留されて海軍潜水学校の練習艦として使用されました。1939年（昭和14年）に除籍されましたが、終戦後も船体は倉橋島に残され、1947年（昭和22年）にポンツーンとして呉市に引き渡されました。

艦歴

1896年（明治29年）：イギリスのホーソン・レスリー社で進水、「エカテリノスラフ」としてロシア義勇艦隊に所属
1904年（明治37年）2月6日：日露国交断絶、釜山沖で日本海軍に拿捕
1904年4月17日：「韓崎丸」と命名
1905年1月：横須賀工廠で潜水母艦への改装工事開始
1905年8月1日：第1潜水艇隊の母艦となる
1906年（明治39年）3月8日：日本海軍籍に編入、水雷母艦「韓崎」となる
1912年（大正元年）8月：二等海防艦に類別変更
1920年（大正9年）4月：水雷母艦に類別変更
1924年（大正13年）12月1日：潜水母艦に類別変更
1934年（昭和9年）11月15日：予備艦となる
1939年（昭和14年）4月1日：除籍
1947年（昭和22年）11月25日：呉市へ引き渡し

主な艦長

石井義太郎 大佐：1905年4月17日 - 1905年12月12日（韓崎丸）
川合昌吾 大佐：1905年12月12日 - 1906年8月30日
小栗孝三郎 中佐：1906年8月30日 - 1907年7月1日
中野直枝 中佐：1907年7月1日 - 1908年12月10日
水町元 中佐：1908年12月10日 - 1909年2月20日
松岡修蔵 大佐：1912年7月5日 - 1912年9月27日
岡野富士松 大佐：1912年9月27日 - 1913年12月1日
関重孝 大佐：1913年12月1日 - 1914年12月1日
東条明次 大佐：不詳 - 1916年11月6日
今泉哲太郎 中佐：1916年11月6日 - 1916年12月1日
今泉哲太郎 大佐：不詳 - 1918年11月10日
福田一郎 大佐：1918年11月10日 - 1919年2月15日
石井祥吉 大佐：1919年2月15日 - 1919年7月10日
原道太 中佐：1920年11月20日 - 1921年12月1日
鈴木辰雄 大佐：1921年12月1日 - 1922年11月20日
栗原祐治 中佐：1922年11月20日 - 1923年6月1日
松下薫 中佐：1923年6月1日 - 1923年10月15日
鈴木秀次 中佐：1923年10月15日 - 1924年7月21日
水野熊雄 中佐：1924年7月21日 - 1924年12月1日
相良達夫 中佐：1924年12月1日 - 1925年4月20日
黒羽根秀雄 中佐：1925年4月20日 - 1925年10月20日
山下兼満 中佐：1925年10月20日 - 1926年12月1日
蔵田直 大佐：1926年12月1日 - 1927年4月20日
林義寛 大佐：1927年4月20日 - 1927年12月1日
平田昇 大佐：1927年12月1日 - 1928年12月10日
渋谷荘司 大佐：1928年12月10日 - 1929年11月20日
高橋真十郎 大佐：1929年11月20日 - 1931年12月1日
大和田芳之介 大佐：1931年12月1日 - 1932年12月1日
樋口修一郎 大佐：1932年12月1日 - 1933年10月20日
堀江吉正 中佐：1933年10月20日 - 1934年11月1日
香宗我部譲 大佐：1934年11月1日 - 1935年5月25日
青木節二 大佐：1935年5月25日 - 1935年11月15日
* 橋本愛次 大佐：1935年11月15日 - 1936年12月1日

要目

改装完成時（1905年）の要目は性能諸元表を参照ください。1919年（大正8年）頃に主缶が宮原式缶4基に交換され、1926年（大正15年）頃には5cm砲2門が撤去され、8cm高角砲1門が装備されました。除籍直前の1937年（昭和12年）頃の常備排水量は6,269トンで、この頃までには艦内の多くの設備が撤去されていたと考えられています。

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