韓武舘

韓武舘の歴史と影響

韓武舘（かんぶかん）は、戦後の日本において空手道を発展させるために設立された道場であり、特に防具付き空手の発祥の地の一つとして知られています。この道場は、昭和20年（1945年）に東京の千代田区九段で開設されました。もう一つの背景には、当時のGHQによる武道禁止令があり、道場の設立は戦後の混乱の中での武道存続と発展の試みを意味していました。

道場の創設者は、修道館の遠山寛賢の高弟たちであり、彼らはGHQの監視を避けるため、韓国籍の尹曦炳（尹快炳）を館長に迎えました。尹は、当時の第三国人として特権を享受しており、この立場が道場の活動を支える重要な要因となりました。尹は、高弟たちと共に防具付きの空手を普及し、関連する空手の冊子を編集するなど、多岐にわたる活動を行いました。彼の尽力は、金城裕によると、「若い事業欲ある才人」と称賛され、その業績はその後の空手界へ大きな影響を及ぼしました。

韓武舘は、短命であったにもかかわらず、戦後の混乱の中での空手の保存と発展に重要な役割を果たしました。特に大きな特徴として、自らの空手の稽古に剣道の防具を使用したことで、組手の競技化を進めたことが挙げられます。この防具の使用は、道場の基本稽古や形とともに、より安全な環境での実戦的な稽古を実現し、その結果、全国空手道選手権大会の開催へと繋がりました。

道場の最も重要な活動の一つは、組手の稽古です。当時の空手家たちは、柔道や剣道と同様に、空手も競技化する必要があると考え、安全性と実戦性を両立させる方法を模索していました。韓武舘の活動は、当時の他の団体にも影響を与え、全国大会が開催されるきっかけになりました。

1949年に尹が韓国に帰国すると、韓武舘は名前を錬武舘に変更し、全日本空手道連盟（旧）につながる組織に発展しました。この流れは、現在の空手界へと大きな影響を与え、特に防具付き空手の確立や競技の普及に寄与しました。道場そのものはわずか5年間の存在でしたが、その貢献は計り知れません。

韓武舘における重要な人物には、金城裕や中村典夫、大山倍達がいます。中村は後に全日本空手道連盟錬武会の理事長になり、大山倍達はフルコンタクト空手を創始し極真会館を設立しました。これらの人物は、道場での経験を生かし、後に日本の空手界の重鎮となっていきました。

道場が閉館した後も、韓武舘の精神と流れは錬武舘を通じて引き継がれ、今でも日本の空手界において重要な影響を与え続けています。韓国に帰国した尹は、ソウル大学の教授となり、韓国内においても空手を教え続けた他、韓国の武道の名称に空手の「手」という字を加えた「跆手道」を提唱しましたが、最終的には跆拳道の名が主流となりました。

韓武舘の短命ながらも重要な歴史は、現在の空手道に大きな影響を与え、武道の発展に不可欠な存在であったことを示しています。

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