音叉

音叉とは

音叉（おんさ、英: Tuning fork）は、特定の周波数の音や固有の振動数を発するU字型の金属器具です。全体的にはY字型を形成しています。この器具は、特に音楽や医療の分野で広く利用されており、音響学の重要な道具の一つです。

音叉の構造

音叉は主に鋼（炭素鋼）で作られていますが、軽量化の目的でアルミニウムやジュラルミンも使用されることがあります。U字型の両端を持ち、底部には持ち手があります。音を発するためには、腕の部分を叩いて振動させる必要があります。その音は非常に弱いため、音を聞くには持ち手を耳に近づけたり、歯でくわえたり、共鳴しやすい物体に触れさせる必要があります。音叉は純音を発生させることが特徴で、叩いた直後には複数の上音が漂いますが、すぐに消え去り、基音の音が残ります。音叉を利用した理科実験では、共鳴箱が取り付けられることが多く、これにより音が増幅される仕組みになっています。

歴史と発展

音叉の起源は、イギリスの王室楽団に所属していたトランペット奏者ジョン・ショアによるものと言われています。音叉が発明される以前は、ピッチパイプ（調子笛）を主に使用していました。 1859年には、フランス政府により標準音a1が15℃で435Hzとして定義され、これを基にジュール・アントワーヌ・リサジューが標準音叉を製作しました。しかし、国ごとに音の標準が異なるため、ベルサイユピッチのa1392Hzやバロックピッチのa1415Hzなどが存在しました。1939年にはロンドン国際会議で標準音a1が20℃で440Hzと設定され、演奏会では442Hzが一般的に用いられることが多くなりました。

特定の周波数の音源としての音叉の利用は、音響学の発展と共に進化してきました。1834年にはヨハン・シャイブラーがトノメータと呼ばれる測定器を考案しました。これは一定間隔で異なる共振周波数の音叉を並べ、測定したい音と音叉とのうなりを利用して周波数を測定するもので、ルドルフ・ケーニッヒによってさらに高度化されました。

音叉の使用方法

音楽用

音楽の現場では、音叉を用いて楽器の調音や基音の確認を行います。これにより演奏者は正確な音程を保つことができます。

医療用

医療の分野では、音叉を用いた聴覚検査や脳外科の感覚検査に加え、糖尿病の進行度を調べるフットケアの際にも使用されます。

理科実験用

学校の理科実験では、共鳴箱を使った音叉が共鳴やうなりを利用した実験で活用されます。

校正用

ドップラー効果を利用したスピードチェッカーの校正作業にも音叉が用いられ、精度の高い測定を支えています。

ヒーリング用

アメリカやドイツでは、音叉の波動を体に伝えて健康を促進するヒーリング手法も行われています。

音響以外の用途

音叉は発振回路の信号源としても使われており、特に周波数シンセサイザ普及前においては重要な役割を果たしていました。また、音叉型の水晶振動子はクォーツ時計の一部として利用されています。さらに、過去には音叉の振動を電気的に発信して直接歯車に伝え、時計を駆動する音叉時計が生産されたこともありました。

まとめ

音叉はその独特な振動特性と音響上の特性から、音楽、医療、科学実験などの多岐にわたる分野で重要な役割を担っています。

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