預 (官職)

預（あずかり）

預（あずかり）とは、平安時代に様々な組織に置かれた職名です。官司、寺社、荘園など、その性格や規模に応じて異なる役割を担いました。

官司における預

『延喜式』には、太政官の厨家や文殿に預が設置されていたことが記されています。10世紀に入ると、その設置はさらに拡大し、後院、院庁、御厨子所、進物所、穀倉院といった様々な官司に見られるようになりました。地方の国衙や郡衙にも設置された例があります。

中央の官司においては、通常、預は別当の下に置かれました。別当は公卿が任命されることが多く、多忙な別当に代わって預が実務を統括する役割を担いました。院庁などの組織では、執事が設置されると、別当、執事の次に預が置かれる例もありましたが、執事と預の関係は官司によって異なっていました。

また、1年交代で任命された年預という職は、預から派生したとも言われています。年預は、特定の期間に責任を負う役職として、組織運営の効率化に貢献しました。

荘園・寺社における預

荘園においては、在地で荘務を掌る職として預が置かれました。荘園の管理運営において、現地の状況を把握し、的確な指示を出すことが預の重要な役割でした。神社の社務や寺院の寺務を掌る者としても預が置かれた例があります。

春日大社や石清水八幡宮といった著名な神社では、上位の神官として正預・権預が任命されていました。これらの預は、神社の祭祀や運営において重要な役割を担い、神社の権威を象徴する存在でもありました。

預の多様性と変遷

このように、預は様々な組織において、それぞれの役割に応じて多様な形態で存在していました。その職務内容は、組織の規模や性格、時代の変化とともに変遷していきました。平安時代を通じて、預は組織運営において欠かせない存在であり、その役割は多岐にわたりました。

預の存在は、当時の社会構造や組織運営のあり方を理解する上で重要な要素です。その多様な側面を考察することで、平安時代の社会をより深く理解することができます。

参考文献
坂本賞三「預」（『国史大辞典 1』（吉川弘文館、1979年） ISBN 978-4-642-00501-2）
玉井力「預」（『日本史大事典 1』（平凡社、1992年）ISBN 978-4-582-13101-7）
* 中野栄夫「預」（『平安時代史事典』（角川書店、1994年） ISBN 978-4-04-031700-7）

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