穀倉院

穀倉院とは

穀倉院（こくそういん）は、奈良時代から平安時代にかけて存在した、民部省に属する令外官（りょうげのかん）の一つです。大内裏内、大学寮の西に位置し、租庸調（そようちょう）の正規手続き外で納められた物品を管理する役所として機能しました。これらの物品は、朝廷の儀式における不足を補ったり、災害時の救済、社寺の費用などに充てられました。

設置と役割

穀倉院の起源は、天平宝字3年（759年）に平城京に設置された常平倉（じょうへいそう）に遡ります。常平倉は、物価の安定を目的として設置されましたが、その後、存廃を繰り返しました。大同3年（808年）に穀倉院として再編され、弘仁13年（822年）には近江国の穀十万石が運び込まれました。これは、延暦寺を尊崇する意味合いも込められていたと伝えられています。

穀倉院は、単なる倉庫ではなく、様々な役割を担っていました。例えば、天候不順などによる米価高騰時には、穀倉院の米を放出して貧民を救済するなどの施策も行われました。

延喜式（えんぎしき）には、穀倉院の運営に関する詳細な規定が記されています。

無主の位田・職田は穀倉院に移管し、地子を徴収する。
畿内諸国から納められる調銭は、穀倉院で管理する。
絁（あしぎぬ）や調綿（ちょうめん）などの物品は、毎年12月に穀倉院に納める。

組織と運営

穀倉院の長官は別当（べっとう）と呼ばれ、摂政・関白、大臣などの高位の公卿が任命されることがありました。また、弁官や蔵人頭が任命される四位別当、左右大史や主税頭・主計頭などが任命される五位別当も存在しました。実務は、預（あずかり）や蔵人（くろうど）と呼ばれる役人が担当しました。

別当職は、学問料との関係から、学問の家系の者が多く任命されました。賀茂保憲や安倍晴明などもその例です。 поздние годы существования穀倉院の別当職は、舟橋家や押小路家が世襲するようになりました。

衰退とその後

穀倉院は、天延3年（975年）以降、史料に記述が見られなくなることから、この頃に機能を失ったと考えられています。しかし、穀倉院領はその後も存在し、室町・戦国時代には、山城国山崎の油公用の領知を巡って、中原氏と清原氏の間で争いが起こりました。

穀倉院学問料

穀倉院は、大学寮の学生に対する奨学金である学問料の支給にも関わっていました。元々、勧学田（かんがくでん）からの貢租が学問料の財源でしたが、様々な経緯を経て、穀倉院がその管理を担うことになりました。穀倉院は、律令制の弛緩によって不足する内廷費用を捻出するための一種の「裏金」捻出の役割を担っていたため、旧勧学田を大学寮に返還することは、財政政策上採るところではなかった。そのため、穀倉院から一部学生への学問料支給を行うことで大学寮側からの不満の緩和に努めました。

関連施設

穀倉院と類似した施設として、正倉（しょうそう）、不動倉（ふどうそう）、動用倉（どうようそう）、廩院（りんいん）などがあります。これらの施設も、穀物の貯蔵や管理を行っていました。

まとめ

穀倉院は、律令制下における重要な財政機関であり、租税以外の物品を管理し、様々な用途に活用されました。その運営は、朝廷の財政を支えるとともに、社会の安定にも貢献しました。穀倉院の歴史を紐解くことは、当時の社会や経済を知る上で重要な意味を持ちます。

参考文献
米田雄介「穀倉院」（『国史大辞典 5』吉川弘文館、1985年） ISBN 4-642-00505-6

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