額安寺

額安寺（かくあんじ）

額安寺は、奈良県大和郡山市額田部寺町に位置する真言律宗の寺院です。山号は熊凝山。本尊は十一面観音です。「がくあんじ」ではなく「かくあんじ」と読みます。

歴史

額安寺は、大和川と佐保川の合流地点近くにあり、かつて額田部氏という豪族の氏寺でした。額田寺とも呼ばれています。

創建については、南都七大寺の一つである大安寺の前身、推古天皇29年（621年）に聖徳太子が額田部の地に建立した熊凝精舎であるという説がありました。熊凝精舎が移転と改称を繰り返し、大安寺になったというものです。しかし、現在では、熊凝精舎を額安寺とする説は史実とは認められていません。

奈良時代には、額安寺の伽藍と周辺の寺領を描いた「額田寺伽藍並条里図」が作成されました。この図は国宝に指定されており、当時の額安寺の様子を知る上で貴重な資料となっています。図によれば、南大門、中門、金堂、三重塔、講堂、僧坊などが建ち並んでいたことがわかります。

創建当初の瓦は、7世紀第II四半期に作られた単弁六弁蓮華文軒丸瓦です。また、境内からは法隆寺の創建伽藍（若草伽藍）出土瓦と同型の軒平瓦が出土しています。

平安時代には寺勢が衰えましたが、鎌倉時代後期に西大寺の叡尊・忍性らによって再興されました。しかし、戦国時代の明応8年（1499年）に兵火で焼失し、再び荒廃。その後、豊臣秀吉によって寺領が与えられ、再興されました。秀吉は五重塔を四天王寺に移築させています。

江戸時代には、寺領12石が公認されました。

境内

境内には、本堂、庫裏、納骨堂などがあります。

本堂：慶長11年（1606年）に再建されたもので、大和郡山市指定有形文化財です。
宝篋印塔：慈真和尚が母の供養のために作ったもので、文応元年（1260年）の銘があります。銘のあるものとしては日本で3番目に古いものです。奈良県指定有形文化財。
忍性の墓：重要文化財。
善願上人（順忍）の墓：重要文化財。

文化財

額安寺には、数多くの文化財が所蔵されています。

重要文化財

五輪塔 8基：忍性の墓と善願の墓を含む。寺の北側の境外墓地に立つ。うち2基に永仁5年（1297年）銘がある。

奈良県指定有形文化財

宝篋印塔
黒漆六角厨子 1基

大和郡山市指定有形文化財

本堂

額安寺旧蔵の文化財

（国宝）額田寺伽藍並条里図（国立歴史民俗博物館蔵）
（重要文化財）黒漆小龕（首懸駄都種子曼荼羅厨子）（奈良国立博物館蔵）
（重要文化財）木造文殊菩薩騎獅像（文化庁保管）
（重要文化財）木心乾漆虚空蔵菩薩半跏像（文化庁保管） - 奈良時代から平安時代初期の作
（重要文化財）五輪塔納置品（文化庁保管）
絹本著色聖徳太子及び道慈律師像 2 幅 室町時代
額安寺大塔供養願文 鎌倉時代
大方広如来不思議境界経 平安時代
蘇磨呼童子請問経 巻下 平安時代
額安寺文書 5 巻 鎌倉 - 南北朝時代
金銅独鈷杵 鎌倉時代

2019年には、額安寺伝来の木造四天王像から、行基が最期を迎えた菅原寺（喜光寺）から移されたとする伝承を裏付ける墨書銘文が見つかりました。

札所

聖徳太子霊跡22番
大和北部八十八ヶ所霊場87番

アクセス

近鉄橿原線平端駅より徒歩約20分
西名阪自動車道大和まほろばスマートインターチェンジより車で約3分
平端駅発安堵町コミュニティバスにて「額安寺口」下車徒歩5分

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