顧成

顧成（こ せい）：明朝初期を支えた不屈の武将

顧成（1330年 - 1414年）は、元末から明初にかけて活躍した軍人です。字は景韶といい、潭州湘潭県の出身です。その生涯は、動乱の時代を武勇と知略で切り開き、明朝の建国と安定に大きく貢献しました。

若き日の顧成：並外れた膂力と武芸

顧成の祖父は舟を操る仕事をしており、長江と淮水を行き来していました。その縁で一家は湘潭から江都に移り住みました。顧成は若い頃から体格が大きく、並外れた腕力を誇っていました。特に馬槊の扱いに長け、身体には入れ墨を施していたといいます。その姿は、周囲の人々を畏怖させるほどの迫力があったでしょう。

朱元璋との出会い：明朝建国への道

1355年、朱元璋が長江を渡ると、顧成はその武勇を見込まれて配下に加わりました。朱元璋の親兵として重用され、その傘下で数々の戦に参加しました。ある時、朱元璋に従って外出する際に、船が砂に乗り上げて動けなくなったことがありました。顧成は、その船を自ら背負って運んだという逸話が残っています。1356年には、鎮江攻略戦で捕虜となりますが、脱出して味方の勝利に貢献し、百戸に任じられました。その後も数十戦を経験し、その都度功績を挙げ、堅城衛指揮僉事にまで昇進しました。

夏討伐と貴州での活躍

1371年、顧成は夏への遠征に参加し、羅江を攻め、元帥以下20数人を捕獲し、漢州を降伏させました。夏を平定した後、成都後衛指揮僉事に転任しました。1373年には、重慶での宗教反乱の首領、王元保を逮捕する手柄を挙げました。1375年には、貴州の守備に転じ、少数民族の反乱を鎮圧するために連年出兵しました。1381年には、傅友徳に従って雲南遠征に参加し、先鋒を務めました。普定を攻略した後、その地に留まって防備を固めました。数万の兵を率いる少数民族が攻撃を仕掛けてきましたが、顧成は自ら先頭に立って数十人を討ち取り、敵を退却させました。さらに残党が南城に立て籠もると、捕虜を斬り、「夜に2回鼓を打つと、お前たちを殺しに来る」と宣言しました。その夜、予告通りに鼓が鳴り響き、角笛が吹かれ、砲撃が開始されると、反乱軍は恐れをなして逃走し、普定府に属する地域はすべて平定されました。その功績により、指揮使に昇進しました。1384年には、阿黒・螺螄など十数か所の砦を平定しました。

貴州統治とさらなる功績

1385年、顧成は普定府を廃止し、その地を分割して3州6長官司を設置するよう上奏しました。貴州都指揮同知に昇進し、賄賂を受け取ったり、玉器を不正に使用したりする者を厳しく処分しました。1396年には、右軍都督僉事に転じ、征南将軍の称号を得ました。何福と協力して水西の少数民族を討伐し、その首長の居宗必登を斬首しました。1397年、西堡・滄浪の諸寨で反乱が起こると、顧成は指揮の陸秉と息子の顧統を派遣し、分かれて鎮圧しました。顧成は十数年にわたり貴州に駐在し、百数十の少数民族の砦を平定し、首長を殺害し、残りの人々を帰順させました。同年の2月には、南京に召還されました。

靖難の変と鎮遠侯の封

1399年、顧成は左軍都督となり、耿炳文に従って燕王朱棣の軍を防ぎましたが、真定で捕虜になりました。朱棣は顧成の拘束を解き、「これは天が私にあなたを授けたのだ」と言いました。顧成は北平に送られ、世子の朱高熾を補佐して北平を守ることとなりました。建文帝側の軍が北平城を包囲した際、城内の防御や手配は顧成に相談されました。朱棣が永楽帝として即位すると、顧成はその功績を認められ、鎮遠侯に封じられ、世襲が認められました。貴州に駐屯するよう命じられました。

晩年の活躍と最期

1403年、顧成は西北辺境の防備を固め、皇太子を早期に立てるよう上奏しました。1408年には、南京に召還されて金品を賜り、貴州に戻りました。思州宣慰使の田琛と思南宣慰使の田宗鼎が対立し兵を起こすと、顧成は永楽帝の命を受け、5万の兵を率いて両者を制圧し、田琛らを捕らえました。思州・思南の地は分割され、州県が設置され、貴州布政司が設立されました。同年8月、台羅苗の普亮らが反乱を起こすと、顧成は二都司三衛兵を率いてこれを鎮圧しました。南中に駐屯した際は、現地の人々によって生祠が建てられました。北京に召還された際には、太子の朱高熾の監国を補佐するように命じられましたが、「太子は仁明で、廷臣も皆賢いので、私のような者が補佐する必要はない」として辞退しました。しかし、太子廃嫡の動きがあることを知り、朱高熾が不安を感じると、顧成は「殿下はただ誠意を尽くして父母を敬い、民衆を救恤なさればよい。万事は天にあり、私のような小人が気にする必要はない」と述べ、固辞しました。1414年5月、顧成は85歳で亡くなりました。死後、夏国公の称号が追贈され、武毅と諡されました。

顧成の遺産

顧成は生涯を通じて数々の戦で武功を挙げ、明朝の建国と安定に大きく貢献しました。特に貴州の統治においては、少数民族との融和を図り、地域の安定と発展に尽力しました。その功績は後世にまで語り継がれ、今もなお、英雄として尊敬されています。

8人の息子をもうけ、長男の顧統は普定衛指揮となりましたが、顧成が燕王朱棣に降ったために、建文帝の政権によって殺害されました。

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