風の電話

風の電話とは

「風の電話」は、岩手県上閉伊郡大槌町のベルガーディア鯨山に設置された、電話線の繋がっていない黒電話が置かれた電話ボックスです。庭師の佐々木格氏が、亡くなった従兄にもう一度話したいという想いから2010年に自宅の庭に設置したのが始まりです。東日本大震災後、被災者が亡くなった家族への想いを伝える場所として整備され、多くの人が訪れるようになりました。

概要

電話ボックスの中には、黒電話とノートが置かれています。訪れた人は、受話器を取り、亡き人へ心の中で語りかけたり、ノートに想いを綴ったりすることができます。電話機の横には「もしもし、聞こえますか…」というメッセージが添えられています。この電話は、電波を通して通信するのではなく、訪れた人の心の中にある想いを届けるものです。

沿革

風の電話は、佐々木格氏が太平洋の見える風景を気に入って移住したことがきっかけで誕生しました。2010年に亡くなった従兄との再会を願う気持ちから、自宅の庭に白い電話ボックスを設置しました。この電話ボックスは、以前パチンコ店で使用されていたものを譲り受けたものです。ボックス内に飾られた詩は、亡き従兄が書いたものです。

2011年の東日本大震災では、佐々木氏が自宅から津波を目撃しました。この出来事をきっかけに、被災者が亡くなった家族に想いを伝えられる場所として、敷地を整備し、祈りの像やベンチを設置しました。そして、「メモリアルガーデン」として一般に開放しました。

2012年には、全国から寄贈された約4,000冊の本が収められた「森の図書館」が併設されました。図書館は完全予約制ですが、多くの人が訪れています。2014年には、絵本『かぜのでんわ』が出版され、さらに多くの人に知られることとなりました。同年7月には、来訪者が1万人を超えました。

2014年9月には、佐々木氏自身が作詞したCD『風の電話』が制作されました。このCDには、震災の記憶を風化させないという強い思いが込められており、ベルガーディア鯨山で販売されています。

2015年には、強風で電話ボックスが飛ばされるというアクシデントがありましたが、支援者によってすぐに再建されました。2018年には、老朽化していた木製の電話ボックスが、全国からの寄付によってアルミ製に更新されました。

2017年には、佐々木氏が風の電話の成り立ちから現在までの活動を綴った書籍『風の電話：大震災から6年、風の電話を通して見えること』が出版されました。

所在地・アクセス

所在地：〒028-1101 岩手県上閉伊郡大槌町浪板9-36-9

アクセス：三陸鉄道リアス線 浪板海岸駅から徒歩約8分（500m）

周辺

周辺には、大槌城址、大槌湾、蓬萊島、浪板海岸、吉里吉里海水浴場などの観光スポットがあります。

風の電話をテーマとした作品

• - 書籍：佐々木格著『風の電話：大震災から6年、風の電話を通して見えること』（2017年、風間書房）
• - CD：『風の電話』（2014年）
• - テレビ番組：NHKスペシャル『風の電話〜残された人々の声〜』（2016年）
• - 絵本：『かぜのでんわ』（2014年、金の星社）
• - 楽曲：『風の電話〜空までとどけ!』（2016年）、『風のワルツ』（2017年）
• - 映画：『風の電話』（2020年公開、諏訪敦彦監督）

風の電話は、単なる電話ボックスではなく、亡くなった人への想いを繋ぐ場所として、多くの人々の心に寄り添っています。その存在は、メディアを通じて広く知られるようになり、国内外から多くの人が訪れるようになりました。震災の記憶を風化させない、そして大切な人を想う気持ちを大切にする、そんなメッセージが込められた場所です。

もう一度検索