風間八左衛門

風間八左衛門

明治から昭和期にかけて活躍した日本の実業家、そして政治家。1879年（明治12年）6月27日にこの世に生を受け、1942年（昭和17年）10月21日にその生涯を終えた。旧名は嘉一。

出自

彼の出生地は、京都府葛野郡桂村（現在の京都市西京区）である。風間家は代々「八左衛門」の名を襲名し、醤油商「鍋屋」を営む家柄であり、十数代にわたり続く京都府下でも有数の旧家であった。彼は先代風間八左衛門の長男として生まれ、1888年（明治21年）12月に家督を相続するとともに、代々の名跡である「八左衛門」を襲名した。

実業家としての活躍

家業の醤油業を継承しつつも、風間八左衛門の活動範囲は多岐にわたる事業分野に及んだ。彼は様々な企業の経営に参画し、その手腕を発揮した。地方においては、桂村の村会議員や京都府農会長を務め、地域産業の振興にも力を注いだ。

企業の要職としては、広島瓦斯の専務取締役、三国紡績の常務取締役といった役職を歴任した。さらに、帝国石油、愛国生命保険、日本活動写真、桜セメントといった各分野の有力企業で取締役を務めるなど、その影響力は広範に及んだ。特に、帝国工業や太湖汽船では社長として経営のトップに立ち、その舵取りを担った。また、嵯峨銀行の監査役として、金融分野における経営の健全化にも貢献した。これらの活動から、彼は明治後期から昭和前期という日本の産業が大きく発展した時代において、様々な事業の牽引役の一人であったことがうかがえる。

政治家としての歩み

実業界での確固たる地位を背景に、風間八左衛門は政界にも進出した。1920年（大正9年）に行われた第14回衆議院議員総選挙において、彼は京都府第3区から立憲政友会の公認候補として立候補し、見事に当選を果たした。衆議院議員としては一期を務め、国政の舞台で活動した。

衆議院議員としての活動に加え、彼は貴族院議員としても重要な役割を果たした。京都府下で多額の納税をしていたことから、多額納税者議員として貴族院に互選されたのである。1925年（大正14年）9月29日に貴族院議員に就任すると、「研究会」という会派に所属して活発な政治活動を展開した。貴族院議員としては、実に3期にわたってその任期を務め上げ、1942年（昭和17年）2月7日まで在任した。衆議院、貴族院の両院で活動したことは、彼が当時の日本において、実業家としてだけでなく、政治家としても確かな存在感を示していたことを示している。

親族

風間八左衛門の妻は、京都の中路關之助の長女であるさく（1877年生）である。長男の嘉雄（1900年生）は、後に父と同じく八左衛門の名を襲名している。嘉雄は慶應義塾大学理財科を卒業後、東京毛織や合同毛織といった企業を経て、津村順天堂の役員を務めた。嘉雄の妻である英子（1906-2003）は、著名な実業家で貴族院議員でもあった津村重舎（津村順天堂創業者）の二女にあたる人物で、日本女子大学の卒業生である。また、風間八左衛門は妻さくの他に、小原キシとの間にも一男四女をもうけている。

まとめ

風間八左衛門は、京都の歴史ある旧家の伝統を受け継ぎつつ、明治から昭和にかけての変革期において、実業家および政治家としてその手腕を振るった人物である。醤油業に始まり、ガス、紡績、石油、保険、映画、セメント、鉄道といった多岐にわたる分野で経営に携わった事業家としての顔と、衆議院議員、そして長きにわたり貴族院多額納税者議員として国政に関与した政治家としての顔を持っていた。彼の生涯は、当時の日本の経済発展と政治の動向を理解する上で、一つの重要な事例を提供していると言えるだろう。

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