颯田琴次

颯田琴次（さった ことじ）

颯田琴次（1886年7月24日 - 1975年10月2日）は、日本の耳鼻咽喉科学者、音声学者であり、その幅広い知識と才能で多方面に貢献した人物です。

生涯

東京で生まれた颯田は、東京帝国大学（現在の東京大学）医学部と薬学部を卒業後、さらに東京音楽学校（現在の東京藝術大学）も卒業するという異色の経歴を持ちます。1920年からは、東京大学の耳鼻咽喉科教室と生理学教室で研究活動を開始し、1931年には「音響刺激に因る耳殻反射運動」の研究で医学博士号を取得しました。

1936年には、小幡重一、石本巳四雄、田口三郎らと共に日本音響学会を設立し、日本の音響学の発展に大きく寄与しました。1943年には東京帝国大学医学部の教授に就任、その後1952年には東京藝術大学の教授も兼任しました。1953年には、長年の放送文化への貢献が認められ、NHK放送文化賞を受賞しました。1959年には、国立聴力言語障害者更生指導所の初代所長に就任し、聴覚や言語に障害を持つ人々の支援に尽力しました。また、1969年には日本青少年文化センターの会長に就任し、若者の育成にも力を注ぎました。この間、国語審議会委員、NHK交響楽団顧問、NHK評議員、文部省推薦映画の選定委員、国立劇場評議員、日本耳鼻咽喉科学会理事長など、数多くの要職を歴任しました。

音楽への造詣

颯田は、医学・音声学の専門家であると同時に、音楽家としても非常に優れた才能を持っていました。特にヴァイオリン演奏においては専門家レベルの腕前を持ち、しばしばプロの交響楽団に加わって演奏を披露していました。また、声楽家の診断から発声指導まで幅広く行い、音楽界にもその名を轟かせました。

エピソード

作曲家で指揮者の山田耕筰に対して「カツラを被れ」と指摘したエピソードは有名です。この指摘がきっかけとなり、山田耕筰は「山田耕作」から「山田耕筰」へと改名したとされています。

著書

颯田は、研究活動だけでなく、多くの著書も残しました。単著には、『感覚系 耳の機構について』、『食道・外頸部・レ線学的診断と治療・音声』、『かたい声、やわらかい声』などがあります。また、共著には、『音声学』、『音声の生理』、『食道音声の実際』、『音声障害の臨床』などがあります。これらの著書は、耳鼻咽喉科学、音声学の分野における重要な文献として、現在でも多くの研究者や学生に活用されています。

晩年

颯田琴次は、その生涯を通して、医学、音声学、音楽の発展に貢献し、多くの人々に影響を与えました。彼の業績は、今もなお、各分野で高く評価され、語り継がれています。

もう一度検索